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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第15章 君は初恋は? 【灰原】


「……………お前だよ」
ちら、と向ける先には、きょとんとする腐れ縁の顔。へ、と小さくこぼした彼女は、次の瞬間自分を指差して大声を上げて立ち上がった。
「あたし!?」
「声がでけぇ」
何事かとこちらに向けられた周りの視線に、すみませんなんでもないですと笑いかけながら園子は座り直した。そしてテーブル越しにずいと郁大へ顔を寄せる。
「どういうことよ、全然知らなかったんですけど?」
「そりゃ言ってないし……一瞬でも初恋は初恋だろ」
「…一瞬?」
近い、と身体を起こして避けた郁大に、園子が怪訝そうな顔を向ける。京極はかたまっていたところから我に返ったあと何か言いたそうに、蘭は少々ハラハラしながら見守っていた。
「五歳くさいかな。初めて鈴木財閥主催のパーティに出席した時、父さん達とはぐれて廊下をうろうろしてたら近くの部屋から女の子が出てきたんだ。可愛いドレスを着て、大人しそうで。ちょっと不機嫌そうだったけど、それも可愛く見えて。けど次の瞬間、その女の子が癇癪を起してさ…」
「…一気に冷めたと」
「そういうことだ」
うん、と頷くと、言われた本人は複雑そうな顔でため息をついた。腐れ縁の昔馴染みの初恋相手がなんと自分だったかと思えば、一瞬にして終わったという。複雑以外に言葉が見つからない。そんな園子の様子とは裏腹に、京極は少し安堵したような顔をしていた。それを読みとって、郁大はもうひとつ言葉を重ねた。
「と、いうわけなんで、安心してください。それに、今は他に好きな相手がいますし」
「は!?なにそれきいてない!」
京極に言った言葉に即座に食いついてきた園子に郁大は先程同様「言ってないしな」と返す。
「誰よ!?あたしの知ってる子?」
「知ってる…と言えば知ってるかもな。言うつもりはないが」
「なんでよ~~~!」
ずるいとでも言いたげな顔で彼を睨む園子、気にせずそっぽを向く郁大。二人の様子を見て、京極は小さく笑みを浮かべた。
「京極さん?」
「いえ…お二人は確かに、男女の仲というより、“腐れ縁”というのが合っているんだなと思いまして」
「そうですね…私は鴉羽くんとは小学校三年生からの付き合いですけど、二人は最初からこんな感じだったと思います」
京極と蘭が言葉を交わし、また二人を見る。男女を越えた不思議な縁と絆が、郁大と園子の間にあるのを感じていた。
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