第15章 君は初恋は? 【灰原】
「俺と園子はなんていうか、ただの幼馴染…は少し違うか。腐れ縁、ってやつですよ」
「腐れ縁…ですか?」
腐れ縁、という言葉に京極が軽く目を瞬かせる。
「そう、腐れ縁です。俺の親が鈴木財閥と縁が深くて、俺も小さい時から鈴木財閥主催のパーティなんかによく出席してたんで、そこで会う事が多かったんです。タメってのもあって、一緒にいされられることも多々ありますしね」
そう説明すると、京極は「なるほど…」と少し思案した。次は何が来るのだろうかと内心身構えながら待っていると、思っていた所とは違う場所から声が上がった。
「心配しなくても大丈夫よ、真さん!郁大くんはあたしにこれっぽっちもなびいちゃくれないんだから」
「その言い方だろ俺になびいてほしいようにきこえるからやめろ、誤解を生む」
はぁ、とまたため息をついて郁大が首を振る。園子は悪びれた様子無く「冗談よ、じょーだん」と笑った。冗談が通じる相手かどうか見てから言ってほしい。
「けどまぁ、確かに園子相手にその気はないんで、安心してください。あぁ、魅力が無いとは言ってないんで、そこも誤解無く」
園子に魅力が無いという意味にとられないよう補足をつけて説明する。彼女の魅力は、わかる人にはよくわかるのだから。
「そもそも郁大くんってあんま女子に興味無いわよね。初恋とかどうだったのよ?」
「……」
さすがにそんな話が出るとは思わず、郁大はピシとかたまる。「なによ、いくら興味ないといっても初恋がまだなんて言わないでしょ?」という言葉をききながら、郁大はゆるゆるとテーブルに肘をついてそっぽを向いた。そして数秒口をつぐむ。三人の視線が郁大に集まり、やがて居たたまれなくなって口を開いた。