第11章 緋色の真相 【安室/公安男】
昴が〝マスク〟を外した。風邪気味だからとつけている、口元のマスクだった。
「そのマスクじゃない…その変装を解けと言っているんだ!!赤井秀一!!!」
痺れを切らした安室が憤激の声を上げる。だが昴の方は気にも留めず、「変装?赤井秀一?さっきから何の話です?」と返した。安室は逸る気持ちを抑えながら、この家に隠しカメラが設置されていることを見抜いてみせる。
「この様子を録画してFBIに送るつもりなのか?それとも別の部屋にいる誰かが…この様子を見ているのかな?」
「…」
昴は少し間をあけ、ゴホゴホと咳き込んだ。
「そもそもその赤井秀一という男…僕と似ているんですか?顔とか、声とか…」
「フン…顔は変装、声は変声機…」
彼は今日の昼間、この辺りをリサーチしていたらしい。そして、隣の家の阿笠博士が、評判が良かったのに急に販売を中止した発明品があったことに目をつけた。それは、チョーカー型変声機。
「そう…大きさは丁度、そのハイネックで…」
安室がソファから立ち上がり、昴に近づく。
「隠れるぐらいなんだよ!!」
そして彼は、昴のハイネックの首元を下した。だがそこには昴の首があるだけで、他には何も無かった。
先程の無茶でやつらの車はタイヤに異常が発生しているらしい。まだ抵抗して走り続けているが、徐々にその差は埋まっていた。
「いい加減観念してくれねぇかな」
軽くこぼすのはFBIを追う車を運転する青年。猛スピードのカーブも諸共せずハンドルを切る。
「千綾警部!」
「わかってる、よ!」
千綾朔司はまたもギュイとハンドルを切った。もう少しで追いつけるだろう。頂上に辿り着く前に捉える。口元に笑みが浮かぶ勢いでアクセルを踏んでいた、その時だった。
「何…?」
前方を走るFBIの車の屋根が開く。そしてそこに現れた人物に、朔司は目を見開いた。
「赤井秀一…!」
「れ、連絡します!」
助手席に座った男がスマホを取り出して電話をかけるが、相手はなかなか応答してくれない。そうこうしているうちに、赤井は拳銃をこちらに向けて狙いを定めている。