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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第9章 ミステリートレイン 【灰原/安室】


「哀さん!」
郁大はそこに小さな人影を見つけて声を上げた。よかった、ベルモットには出くわさなかったようだ。
「っ!?…鴉羽、くん…?」
「よかった、まだ飲んでないな」
目を見開いて驚く彼女に目線をあわせる。
「どうして…私が1人になったのは、何の為だと…!」
「わかってる。俺達を巻き込まない為だろ」
「だったら!」
「わかってないな、志保さん」
「な、に」
急に本名を呼ばれた哀はたじろいだ。郁大はそんな彼女の両肩に手を置いて、その顔を見つめる。
「俺はもう巻き込まれてるし、巻き込まれに行ってるんだよ、自分からな。…あんたが大事だから」
「どうして…どうしてそんな…」
「仕方がないだろ、好きなんだからさ」
「っ…!」
苦笑をまじえた笑みを向けられて、哀は戸惑った。自分のことを知っているはずなのに、何をしてきたかわかっているはずなのに、今どういう状況かわかっているはずなのに。それなのに、“仕方ない”で、感情で済ませる彼が、眩しい。
「ほら、志保さん、こっちだ」
「ど、どこに行くのよ」
「少し居心地が悪いかもしれねーけど、室橋さんが殺された部屋だよ」
「えっ?」
「さすがにやつらにも盲点だと思うってな」
「…工藤くんがそう言ったの?」
「新一達、かな」
「達…?」
「詳しい話は後だ。自分で歩かないなら抱えるぞ」
「あ、歩くわよ!」
郁大が両手を広げたのを無視して哀は足を踏み出した。郁大はそんな彼女に笑みを浮かべて背を見つめる。
(…ありがとう)
哀の心の声は届かないまま、2人は7号車のB室に入り込んだ。





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