第7章 Happily ever after ⑤安土城の珍客〜家康〜
ざわざわと、何だか騒がしい音がして目を覚ます。外を見るとまだやっと辺りが薄っすら明るくなってきたくらいだ。
「騒がしいな」
家康が私をその腕の中に抱きしめながら呟く。
「家康も起きたの?どうしたんだろうね」
城内で何かが起きていると思い、私たちは身支度を整えて、部屋から出てみた。
すると、
「あっ、家康様、サラ様とご一緒でしたか」
三成くんが何かを抱えながら慌てた様でやってきた。
「こんな朝から何騒いでんの」
不機嫌そうに家康が言う。
「城門の所に手紙とこれが......」
何か手拭いの様なものに包まれた物を私達に近づけて見せてくれた。
「えっ?」
「っ.........」
それは、赤ちゃんだった。
「何で赤ちゃんが城門に?」
「育てられないから捨てたんでしょ。城に捨てれば何とかしてくれると思って」
家康が淡々と言う。
「捨てるって、自分の子を?」
信じられない言葉が家康の口から飛び出し、久しぶりのジェネレーションギャップに驚く。
「この時代では、珍しい事じゃない」
ふいっと私から目を逸らした。
「そんな.....」
三成くんの手の中にいる赤ちゃんは、まだ小さくて弱々しいのに。
「で、手紙には何て書いてあったの?」
家康が三成くんに問う。
「それが、」
三成君が手紙を家康に渡す。
家康が手紙を広げると、そこには私にも読めるくらいの拙い字で、
『あなた様のお子です』
その一行だけが書かれてあった。
「あなた様のお子ー!?」
私と家康は声を揃えて叫んだ。