第12章 野生な彼〜直江兼続誕生日sp〜
「あの薬…そうか、信じたくはないが、あの薬は本物だったという事か……、意識を飛ばしていたとは言え悪かった」
私の体の痕を指でなぞりながら兼続さんは私に謝る。
「どうして謝るんですか?私は、本能のままに求められて、嬉しかったです」
後悔の色を滲ませる藤色の目を見つめ、私は軽い口づけをした。
「っ馬鹿、どうせ怖いだのイヤだの言って泣いた癖に」
「それは…言いましたけど、そのままの意味じゃあありませんから」
グズグズに蕩けさせられるのは、気持ちよさと怖さの狭間で訳が変わんなくなるから、あー言う言葉が出てしまうのはどうしようもないのだ。
「それよりも、兼続さんお誕生日おめでとうございます」
今日は兼続さんの誕生日。ありったけの思いを込めて抱きついた。
「ありがとう」
兼続さんも私を抱きしめ返してくれる。
とても幸せだ。
「誕生日の贈り物、まだ用意できてないんですけど…欲しい物、本当にありませんか?」
初めてお祝いできる誕生日だからこそ、何かを差し上げたいのに…
「この間も言ったが何もいらない」
「でも、」
「お前を手に入れた。それだけで一生分の贈り物を既に俺はもらっている」
私をまっすぐに見つめ、一生モノの言葉を言ってくれた。