第12章 野生な彼〜直江兼続誕生日sp〜
ことの始まりは今日のお昼。
兼続さんの誕生日プレゼントを探しに城下町へとやって来た私は、初めて見る露店で足を止めた。
「わあっ、輸入雑貨のお店?」
舶来物が所狭しと並ぶその店に目を奪われていると、
「お嬢さん、何かお探しですかな?」
如何にも大陸から来ました風な装いの男性がお店の中から出てきて声を掛けてきた。
「あ、はい。大切な人の誕生日の贈り物を探してまして…」
「お嬢さんの恋人ですかな?」
見た目は大陸人っぽいのに流暢な日本語を話す人は、私の大切な人が恋人だと言い当てて笑顔を浮かべた。
「は、はい。大切な…大好きな人なんです」
かぁっ、頬が熱くなる。
そんな指摘さえも嬉しくて恥ずかしい位、私は兼続さんの事が大好きで仕方がない。
「でも、彼の好きな物が分からなくて、実は困ってるんです」
恋仲になって間もない私にとって、初めてお祝いできる兼続さんの誕生日はとても重要なのに、
『俺の誕生日など気にする必要はない』
と、兼続さんはいつも通りのクールっぷり。
欲しいものはないかと聞いてもないって言うし、好きな物はと聞いてもないって言う。
兼続さんが自分のためになる事を欲する性格じゃないってよく分かってるし、私がお願いしても無理だって分かってるけど、
「一度くらい、素直に甘えて本能のままに行動して欲しいんだけどな……ってごめんなさい。こんな愚痴みたいな事言ってしまって……」
見ず知らずの人にする話じゃなかったと思い謝ると、
「いえいえ、お嬢さんの恋人を愛する気持ちがよく分かりましたよ」
お店の主人はそう言ってニコッと笑うと、お店の棚から何かを取り出した。
「開店記念のお近づきに、お嬢さんにこれをあげましょう」
そう言って渡されたのは、3センチ四方位の小さな紙包み。
「これは?」
手に取って触ってみると、固い錠剤のような感触。