第11章 いいこと探し 〜直江兼続〜
「”いいこと探し”って?あの名作童話の?」
何気に口を滑らせてしまったワードを佐助君は素早くキャッチした。
(…あ、しまった!)
「う、うん。ほら戦国時代にいきなり飛ばされて大変だった中でも、小さな良いことを見つけて頑張ろうって思ってずっと続けてるって言うか…へへ、まぁそんなとこかな?」
(本当の理由は言えないけどこれも本当。ごめん、佐助君)
「なるほど、サラさんが変わった理由はそこにもあるみたいだな。以前の君ならこれを食べた途端、元の時代に帰りたいって泣いてたと思う」
苦しい言い訳だったけど、佐助くんはどうやら納得してくれたようだ。
そして佐助君のご指摘通り、
「うん、私もそう思う。今すぐ帰りたーいって叫んでたよきっと」
以前の私なら、きっとそう言ってた。
だって…本当に、本当に色んな事があったから……
「…そう言えば、さっき謙信様に聞いたけど、兼続さん、無事任務を終えてもうすぐ戻ってくるらしい」
「えっ!本当っ!?」
「この三ヶ月の中で、一番良いリアクションだな」
私の反応にクスッと佐助君は笑い、私の顔は途端に熱くなった。
でも恥ずかしがってる場合じゃない!
「もうすぐってどれくらい?今夜?それとも明日の朝、昼、夜?」
「ごめん、俺もそこまでは…でも兼続さんのことだからもう近くまで戻って来てる気がする」
佐助君のその言葉に今度は心臓がどくどくと騒がしく鳴り出した。
「佐助君、私お部屋に戻るね」
「分かった」
「ありがとう。……あっ、兵糧丸ご馳走様でした」
「また新作ができたら持ってく」
「うん!楽しみにしてるっ!」
佐助君に手を振って私は兼続さんの部屋へと急いだ。
(やっと、やっと会えるっ!長かった三ヶ月が終わるんだ!)
兼続さんとは、戦国武将の直江兼続の事で、更には私の大好きな人で、付き合い始めたばかりの人。
ワームホールに吸い込まれてこの時代へとやってきた私は、様々な偶然が重なって彼と出会い、そして恋に落ちた。
けれど彼には辛くて辛すぎる過去があり、その過去の過ちから自分を許せないと責める彼を私はこの時代に残って愛すると決めた。