第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
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來良と別れて直ぐ後、雷と共に雨が降り出し始めた。
だが寺を燃やす炎の力は弱まるところを知らず、俺は庭先で向かってくる敵を薙ぎ倒す。
「信長様っ!」
來良を託した家臣が戻って来た。
「來良は!?」
「はっ!迎えが来たと言い、振り向いた時には姿が消えていました」
「ふっ、元の世界に戻ったか」
「は?」
「いや、いい。…して、敵は誰か分かったか?」
「はっ!敵は恐らく…」
家臣は苦しそうに口を開き、敵将の名前を俺に告げる。
「…そうか」
(奴ならば完璧に策を講じてあるはずだ)
「俺は奥の部屋へ行く。奴の狙いは俺一人、貴様らは無駄に戦わず投降せよ」
「信長様っ!せめて介錯を」
「無用だ。貴様は己の身を案じよ」
「信長様っ!」
その場で平伏し涙を流す家臣を置いて、俺は奥の部屋へと入った。
パチパチと寺が燃える音と、刀を交え戦う音が耳に届く。
部屋の真ん中にあぐらをかいて短刀を抜く。
着物を大きく開き、腹の脇に短刀の切っ先を当てた。
「信長様」
「ふっ、やっと来たか」
見上げれば、会いたくてたまらなかった愛しい女の姿がある。
「信長様」
久しぶりに見る愛しい顔は、どこか怒っている様に見える。
「ああ、あの娘に口づけた事を怒っておるのか?」
俺の問いに、奴は答えない。
「貴様が俺を置いて死んだりするからだ」
奴の腕を引っ張り抱きしめると、奴も俺を抱きしめ返した。
「あの娘は貴様の生まれ変わりらしい。俺たちが次に生まれ変わるにはどうやら500年かかるらしいぞ?」
久しぶりに感じる奴の髪、肌、唇に、俺の心が浄化されて行く。
「それ即ち、次に生まれ変わるまでの五百年は、あの世で貴様を堪能できると言う事だ。ふっ、そんなに困った顔をするな。俺が貴様でなければならん事、貴様が一番分かっておるはずだ」
「信長様、愛してます」
空良はふわりと微笑むと、優しく唇を重ねた。
「俺もだ、貴様を愛している。もう二度と離さん。俺を、この身体ごと貴様の元へと連れて行け」
屍を誰にも見られぬよう、俺の存在をこの世から消してくれ。
貴様のいないこの世は、寒くて退屈でつまらん。
「空良、俺たちは永遠に一緒だ」
貴様を永遠に愛している。