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武将達との恋物語

第10章 Reincarnation 〜織田信長〜




「來良…」

力強い腕が私の肩を掴むとそのまま抱き寄せられた。


「っ…ふっ、うぅぅ、ごめんなさい」

「何を謝る?貴様は俺に光をもたらした」

「光?」

「そうだ。俺と空良にはまだ未来があるのだと、貴様が来たことによって知る事ができた。貴様は俺に、希望と言う光をもたらしたのだ。だから泣かずに笑え」


今から、自分の身に何が起こるか分かっているはずなのに、信長様の顔はすっきりと晴れやかで、ここへ来てから一番いい笑顔を私に見せてくれた。


「信長様、そろそろ」

待っていた家臣が焦りを滲ます。


「…そうだな」

ずっと、感じていたかった腕の感触は緩み、温もりが離れた。


「この娘を必ず無事に逃せ」

「はっ!」


「信長様っ!」

「來良、五百年後に会おう」

信長様はそう言うと火の手が上がった方へと早足で行ってしまった。

振り向いてもくれない。信長様の心の中には空良しかいないんだ。
本当に私が空良の生まれ変わりなのだとしても、私の入れる余地なんて全くない。

最後に向けてくれた清々しい笑顔は、きっとこれから空良に会えるから。

自分の前世に嫉妬するなんて、あり得ないけど胸は苦しくて痛いほどに軋んだ。


「私達も行きましょう」

家臣の方が声をかけてくれた時、ゴロゴロと雷の音がして大粒の雨が降り出した。

(ワームホールが来る?)

本能寺の変の起こるタイミングでワームホールが再び現れるのだと佐助君が言っていた通りだ。


「私の迎えが来たようなので、私はここから一人で行けます」

「ですが」

「大丈夫です。どうか信長様を…」

「……分かりました。では私はこれで」

この人の目も、既に覚悟を決めた目をしている。
500年後の世界では見ることのできない、綺麗で強くて悲しい色…

ご武運を?
気をつけて?
頑張って?

違う、どれも全部違う!

私の語彙力の限界なのか、私に軽く頭を下げ走り去っていく人にかける言葉は何も思いつかず、大きな轟音と共にぐにゃりと曲がり始めた空間に私は飲み込まれた。

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