ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第13章 別れ
嬉しすぎて緩みそうになる頬を必死に引き締めた私は、
その憲兵に「我々使用人にもお咎めがあるのですか?」と
尋ねた。
憲兵は「いや、下っ端の使用人には咎は無い。
もう既に共犯の使用人は抑えたからな。あんたらには
悪いが今日から新しい職を探してくれ」と言って、
部下に呼ばれるとあっさり部屋を出て行ってしまった。
両親の手足となって悪事を働いていた使用人の名前も
リークしていたのが功を奏したらしい。
この短時間に部下に諸々を指示して、
私の部屋へ単独乗り込んでくるくらいには
優秀な憲兵だったなぁという感想を抱く。
エルヴィンさんの知り合いのようだったから、
優秀なのも当然なのかもしれない。
少なくともエルヴィンさんはこういう事は
信頼ある人物か有能な人間にしか頼まないだろう。
憲兵の口振りからしてエルヴィンさんから
私の保護を頼まれたのだろうというのは覗えたが、
私は敢えて憲兵に名乗り出なかった。
エルヴィンさんの気持ちは嬉しかったが、
やはりこれ以上彼に頼る訳にはいかないと思ったからだ。
今後私を助けた事で彼が被るであろうものを
無くしたかった。