ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第13章 別れ
それから私は混乱に乗じて使用人達に紛れながら、
屋敷から逃げ出すことが出来た。
拍子抜けする程上手くいったなと考えながら
安全な場所へ行くため歩を進めていると、
前方から凄い勢いで馬が走ってきたのが見えたので
道の端に寄る。
とても急いでいるのだろうか、馬の掛け声からも
苛立ちのようなものを感じ、気付かれないように
その人物を盗み見た瞬間胸が締め付けられた。
一瞬で目の前を駆け抜けていったが、
あれは間違いなくエルヴィンさんだった。
真剣な表情で真っ直ぐ前を見据えながら白馬を操る姿を
見て、やはり素敵な人だなと思う。
きっと自分を保護しに来てくれたのだろう。
先程の憲兵は突入時エルヴィンさんが
間に合わなかった場合の保険だったのかもしれない。
遅れてでも来てくれたエルヴィンさんに感謝しながら、
私はもう走り去って姿の見えなくなったエルヴィンさんに
「本当にありがとうございました」と頭を下げた。
もうここからはそれぞれの人生を歩むべきだと思いながら、
私はその場から立ち去った。
―――願わくば、エルヴィンさんと調査兵団が
功績を上げて民衆に認められますように・・・。