ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第12章 取引
「君の覚悟と意志は理解した。願い通り三週間以内に
一派を罪人に出来るだろう。だが、君はどうするんだ?
生家であるカプレーティ家が潰れるとなると君にも
咎が及ぶかもしれないし貴族でもなくなる。
罪人の親を持った元貴族というものは偏見を受けるし、
そのレッテルで君が生き辛くならないか心配だ」
まさか純粋に心配してくれるとは思わず、
私はポカンとしたままエルヴィンさんの顔を見つめた。
「踏み込むのは憲兵団になるだろうが、
その時何の罪もない君まで捕縛され兼ねない。
そして君の両親が『この子も共犯だ』と騒げば
更に君の立場は悪くなる。下手をすれば君も罪人だ。
・・・それでも、君はその『願い』を私に
叶えてくれと言うのか?」
真摯な態度で心配してくれるエルヴィンさんを前に、
私は泣きたくなる衝動を必死に抑え込んだ。
彼ならこの場を口八丁で適当に流し資料だけを
持ち去る事も出来たはずだ。
こちらに余計な心配を与える必要性はどこにもない。
むしろデメリットだ。
私が怖気づいて「やっぱりやめます」と資料を
エルヴィンさんに渡さない可能性だってある。
それなのにそんなリスクを犯してくれてまで、
私を心配してくれる気持ちが嬉しかった。
「ありがとうございます。私は大丈夫ですので
私の『願い』を叶えて下さい」
「大丈夫だとは言うが・・・」
猶も言い募るエルヴィンさんに私はもう一つ
お願いをする事にした。
「では、私に憲兵団が踏み込む日時をお教え下さい。
一度だけ一方的に私へ繋ぎが取れるよう策を考えています。
日時が分かれば、私は屋敷から逃げ出しやすく
なりますので」
「・・・屋敷から逃げ出した後・・・君はどうするんだ?
何かもう計画を立てているのか?」
「えぇ、きちんと計画は立てていますのでご安心下さい」
「・・・そう・・・か。それなら良いんだ。
・・・復讐を遂げた君は死を選んでしまうのでは
ないかと案じてしまった」
苦しそうに目を伏せたエルヴィンさんに
動揺しながらも私は重要な事を何とか彼に伝える。