ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第12章 取引
そりゃ、自分の親を殺して下さいと言っているような
ものだから、そういう反応になるだろう。
きっとドン引きされたに違いないと表情は変えず、
心の中で落ち込んでいると「君がそれを望むように
なった理由を聞かせてくれないか?」と真剣な顔で
エルヴィンさんが尋ねてきた。
私は包み隠すこと無く、自分が得た『真実』を
エルヴィンさんに伝える。
「両親は私を道具としか見ていません。私を使って
エルヴィンさん達を潰そうとしています。
ラウリィが憧れた調査兵団を潰す先兵にされるなど
死んでも御免です」
「・・・他にも何かあるんだろう?」
「はい・・・端的に申し上げますと両親が
ラウリィの仇だからです」
エルヴィンさんは一瞬だけ動揺を見せたが、
すぐに「成程」と納得したように頷いた。
「両親は殺し屋を雇って事故に見せかけラウリィを
殺したようです。そして両親は軍がその件を
追求しないように圧力をかけていました。
その証拠も私が所持しています」
「それが本当なら伯爵夫妻に罪状をつける事は
可能だ。・・・だが、三週間以内というのは
流石にきつい」
「それが私のタイムリミットだからです。
三週間後、侯爵家の男と婚約パーティがあります。
婚約してしまえばこちらのものと、侯爵家に身柄を
引き渡され私は飼い殺しの奴隷になってしまいます。
ですから今、私の願いを叶える確約が取れなければ、
資料と共に出奔も辞さない覚悟です」
ここで適当に確約をして資料が手に入れば
約束を反故にされるという可能性もあるが、
エルヴィンさんの性格上、何が何でもやり抜いて
くれるだろうという確信に近い信頼があった。
資料を無駄にする人ではない。
三週間が無理でも絶対一派を潰してくれるだろう。
そんな期待を抱きながらエルヴィンさんの返答を
待っていると、彼から思いも寄らない言葉が
返ってきて驚いた。