ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第12章 取引
これがエルヴィンさんと最後の食事になるかも
しれないと思うと心臓がバクバクして広場までの
道のりをどのようにして来たのか記憶が無い。
気づいたら到着していて少し落ち込む。
最後くらいエルヴィンさんと普通に
他愛もない話をして、その思い出を
記憶に留めておきたかったと思っていたのに
後の祭りだった。
「何が食べたい?買ってくるから君は座っていなさい」
「え?どうしてですか?一緒に行きますよ」
突然そんな事を言われたので挙動不審に
なりながら返すと、エルヴィンさんは
「体調が悪そうだから」と心配そうに気遣ってくれた。
「無理をしなくて良いんだ。いつもの流れで
ここに誘ってしまったが・・・今からでも戻ろうか?」
「い、いえっ!!体調は悪くないのでご飯食べましょう!」
自分ではいつも通りと心掛けていたはずなのに、
エルヴィンさんには様子がおかしいと写ったらしく
私は大いに慌てる。
自分で最後の食事をぶち壊すなんて御免だ。
「そうか?気分が悪くなったらすぐ言ってくれ。
抱えてでも無事送り届けるからね」
「は、はい。その時は宜しくお願いします」
こんな時まで紳士なエルヴィンさんに
私は直角のお辞儀をしてそんなお願いを
してしまったが、普通に考えたら凄く
迷惑な事だと思い至った。