ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第10章 香水
エルヴィンさんは大人だ。
でも心の中には無邪気な少年がいる気がする。
整髪料の容器を『宝物』と称して嬉しそうに
してくれた時に無邪気な少年が垣間見えた。
でもすぐ大人のエルヴィンさんがそれを
覆い隠してしまったのだ。
大人なのだから当たり前と思うだろうが、
エルヴィンさんの場合は違う気がしてならない。
きっと『無邪気な少年』がエルヴィンさんの本質で、
『大人のエルヴィンさん』がそれを覆い隠す鎧だ。
誰にも触られないように『無邪気な少年』を頑なに
守っているように思える。
きっと私ではダメなのだろう。
私のような一般人では彼の心に寄り添う資格など無いのだ。
共に壁外を駆け抜けるような勇気がある女性でないと
同じ目線にも立てないだろうし、共感し合う事も
出来ないだろうと思う。
『雑貨屋の店員』と『読書好きな大人』
私とエルヴィンさんはきっと今のこの関係が一番良いのだ。
私はそう考えながら、プレゼントした整髪料も
綺麗にラッピングして彼に手渡した。