ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第3章 かつての私
私は生きる為に再び二重生活を送ることになった。
屋敷では親に従順な人形を演じ続け、
外に出ればダリウスさんのお店で働かせて貰ったり、
色々調べ事をしたりする毎日。
あれから何度か夜会に行く機会もあって、
その度にハンサムな彼を見掛けたが、
私はあの時の約束通り声を掛ける事はせず
遠くから見守っていた。
私に気づいた彼は何か言いたそうにしていたが、
彼の周囲には常に人がいてそれどころではなかったらしい。
果たして彼は私に何を言いたかったのだろうか?
この前の泥棒の件を誰にも言わないようにという再度の釘を
刺したいのだろうか?
それならば誰にも言うつもりはないから
安心してほしいのにとは思ったが、
それを伝える事も出来ず日々が過ぎていった。