ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第1章 諦めている人形
――私は恵まれていると思う。
巨人に支配されたこの世界において、
ウォール・シーナで何不自由無い生活を送っているのだから
これで不幸などと言ったら罰が当たってしまう。
ウォール・マリアが陥落して
難民がローゼに押し寄せてきた時も
マリア奪還作戦で多くの民が命を落としていた時も、
私は何不自由無い暮らしをしてきた。
貴族に生まれ、両親の庇護の下
そんな暮らしをしてきたのに、
心が満たされないなどと口が裂けても言えない臆病者だ。
お父様とお母様が望むように、
私はお稽古事も熟したし作法やマナーも身につけた。
綺麗なドレスや宝石も沢山与えられた私は両親にとっては
愛する誇らしい娘かもしれない。
・・・でも、私は知っているの
お父様もお母様も私が本当に好きなものや、
したい事なんか知らないでしょ?
貴方達は『自分の思い通りになる娘』を
愛しているだけなのよ?
私は華やかなドレスなんか嫌い
宝石やアクセサリーも邪魔だとしか思えない
お母様が薦めてきた今流行りの恋愛小説も嫌い
連れ出される夜会も大嫌い