ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第17章 覗き見
私もエルヴィンさんの指輪を彼に嵌めさせた。
彼の手はとても大きくてゴツゴツしていて
掌はマメだらけだった。
・・・当然だ。
彼は常日頃から戦う為訓練もしている。
そんな彼の手が愛おしくて、労るようにそっと撫でた。
「頑張っているエルヴィンさん、大好きです。
でも、どうか長生きして下さい。足掻いて
戻ってきて下さい。腕や足が無くなろうと
這ってでも戻ってきて下さい。
これは私の我儘ですが、お願いします」
エルヴィンさんの目を真っ直ぐ見据えてそう言うと、
彼は真剣な顔で「善処する」と答えた。
『絶対』などこの世には存在しないから、
彼は安易にそれを使わない。
エルヴィンさんは指揮官。
指揮官なら安全と思われそうだけれど、実際は微妙だ。
指揮官である彼が判断すれば、
指揮官が自ら犠牲になる場合もある。
戦場は甘い場所ではないというのは
理解していたつもりだが、言葉では
言い表わせない程切なくなった。
そんな心情を悟ったのかエルヴィンさんは言った。
「君がいるというだけで俺は家に帰りたくなるだろう。
壁外にいても君は今何をしているか想いを馳せるだろう。
帰る場所があると思えばきっと死に物狂いになって
帰ってくる。それこそ腕や足がもげようとも
君の所へ帰りたいと願うはずだ。・・・こんな事しか
言えないが、すまない」
「いいえ、その言葉で十分です。ありがとうございます。
エルヴィンさん」