第2章 プロローグ ーとある街ではー
「おーい。俺の話聞いてたか? 今回はゴブリン達やオーク達を鍛える為に訓練試合を行うんだ。
それに、お前達の試合を行わないとは言ってない。ちゃんとレベルに合わせて日にちをまたいでやるから待っててくれよ。な?」
リムルは、勢いに任せて顔を覗き込んできた珠菜と紫苑の頭をポンポンと撫でる。
「……リムル様が、そう仰るのでしたら…」
「むぅ……」
二人は渋々頷いてくれ、改めて日程やメンバーを調整していく。
白老やリグルドが普段から周りに配り戦力状況を把握していたお陰で、一時間もしないうちに内容の詳細が決まった。
「よし、こんなもんかな。紅丸、ゴブタ」
「はい、リムル様」
「何すかー?」
呼ばれた二人は首を傾げながら返事をする。
「そろそろ街の巡回の時間だろ? 二人でついでに試合のことを皆に伝えてくれないか?」
「分かりました」
「了解っす!」
二人は嬉々として駆け出して行く。それを見てリムルの頬も自然と緩む。
(穏やかだなぁ……)
まるで老人のような感想を思い浮かべる。この時、誰もーーリムルでさえ後に訪れる出来事など、全く予想していなかったのである。