第4章 原作編《体育祭》
紫沫SIDE
その人の体で死角になっていた所から子猫が現れたのだ。
「子猫…?」
「…木から落っこちて、足が動かないみたい」
「え!?ちょっと見せて!」
私も同じ様にしゃがみ込んで子猫を見ると、足に違和感があるのか歩こうとはしているが上手く動かせていない。
「折れちゃってるのかな…流石に動物の怪我は見ただけじゃわからない。けど…」
もし折れてないのならば私の"治癒"で治る筈だと、その子猫に"治癒"を発動させた。
子猫の周りにキラキラと雪が舞う。
「!…何したんだ?」
「え?ああ、私の"個性"。これで治るといいんだけど…」
すると、子猫は足を気にする事なく歩き始めて。
「良かった、骨折とかじゃなかったみたい」
「…治癒の"個性"なのか?」
「んー厳密には違うんだけど、今のは"治癒"で間違い無いよ」
足の違和感がなくなった事が嬉しいのか、体を擦り寄せてきた。
私はお返しにその仔の喉元を撫でてあげると気持ちよさそうに目を閉じている。
「ミャァ」
「にしても、良かったねーお兄さんに見つけてもらえて」
「え?」
「だって、そうじゃなきゃこの仔怪我したままここで動けずにいたと思うよ?私は学校の中にいたからあそこからじゃ多分この仔の姿見えなかった。君がここにいてくれたから見つけられた」
「俺は何も…」
「そんな事ない。この仔は君がいたから助かったんだよ…お兄さんはにゃんこのヒーローだねぇ」
「ニャッ」
最後は子猫に向けて言った。
少し大袈裟かも知れないけど、子猫にとってはそうだと思ったから。
「!」
一瞬びっくりしたような顔をしていた気がするけど、あまり表情の出るタイプじゃないみたいでよくわからなくて。
同じ無表情でも轟君の方がわかりやすいなと思わず考えてしまい、すぐにそれを振り払おうとした時、食堂に行く所だったのを思い出した。
「あ!お昼ご飯食べてない!この仔どうしよう…」
「多分野良だろうから暫くしたら何処かに行くと思う。俺それまでここにいるよ」
「何だか無責任な感じになってごめんね。あとはお願いします。
それじゃあ!」
そう言って私はその場を後にして。
(名前くらい聞いとけば良かったな。もしかして、先輩とかじゃないよね…)
今更相手が年上だったらどうしようと思いつつ私は空かせたお腹を満たす為に、食堂へと急いだ。
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