第3章 原作編《入学〜USJ》
紫沫SIDE
その場に膝をつき、"治癒"を発動させる。
相澤先生の周りにキラキラした雪が舞い始める。
今の私に出来るのは精々捻挫や打撲を治す程度。
骨折を治したり出血を止められないのはわかってる。
それでも、"治癒"をせずにはいられなかった。
(少しでもいいから、治って…っ)
モーションを必要としない"個性"故に、両手で相澤先生の手を握り少しでも治癒の力が働くようにと念を込め精神を集中させるべく、その手に額を押し当てギュッと瞳を閉じる。
近くにいたお茶子ちゃんと梅雨ちゃんはこちらを見守っていた。
「紫沫ちゃんの"個性"って、"治癒"やったん?」
「初めて見るわね。でも、制御が効かないって先生言ってわ。大丈夫なのかしら?」
「なんか、"個性"が暴走してるようには見えへん。それに、キラキラしててむっちゃ綺麗やね」
徐々に自分の体温が低下しているのがわかった。
薄く瞼を上げて見るけれど、相澤先生は重傷のままだ。
軽傷は消えているけど、今以上の"治癒"じゃないと肝心な所を治せない。
「っ…もっと…」
なんだか物凄く大きな音と振動がした気がしたけど。
私は"治癒"に集中していてそれに気を取られている余裕はなかった。
(もっと私に"治癒"の力があれば…相澤先生、お願い、死なないでっ)
まだ全然足りないのに、私の体温ばかりが下がっていく。
それでもいつものキャパオーバーの感覚ではないと思った私は"治癒"をそのまま続けた。
「紫沫ちゃん!」
誰かが私の名前を呼んでいる。
仮死状態になる程の体温低下ではないと油断していたせいか、気付かない内に限界を超えていたらしい私は、プツンと電池切れを起こしたか様にその場で崩れ落ち意識を手放していた。
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