第3章 原作編《入学〜USJ》
紫沫SIDE
気がつくと周りは落ち着きを取り戻し、さっきまであんなに押し潰されそうだった人の勢いもなくなっていた。
相変わらず周りには人が沢山いたけれど。
そのせいで、顔を上げた時には助けてくれたらしき人はいなくなっていて、辺りを見渡そうとしたけどあまりの人の多さに諦めた。
(離れる直前頭に何か当たったような…)
それはほんの一瞬のことでもしかしたら、誰かの頭とぶつかったとかかもしれない。
(でも、なんだかとても優しい感じだった…)
その優しさを前にも感じたことがある。
でもそれは、もう今はないもので、あり得ないことだった。
「紫沫ちゃん!」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには先程はぐれてしまった梅雨ちゃんの姿があった。
「梅雨ちゃん!」
「紫沫ちゃん、大丈夫だった?」
「大丈夫だよ!梅雨ちゃんは?」
「私もなんともないわ」
「良かった!でも、なんだったんだろうね?」
「マスコミが騒ぎを起こしていたらしいの。飯田ちゃんが大声で叫んでたわ」
「え?!そうなの?」
「ええ、とても目立っていたけれど、紫沫ちゃんは気付かなかったの?」
「あ、うん…」
全然気付かなかった。
周りの音が聴こえなくなるほど腕で私を庇ってくれていたのか…
あんな人混みの中そこまでして助けてくれたのに、お礼の一つも言えないなんてなんて申し訳ない…
でも、どうしてあんなにすぐいなくなってしまったんだろうか?
何か急ぎの用事でもあったのかな?
でも、そしたら何で助けてくれたのかな?
疑問ばかりが浮かんでは何一つ答えが出るものはなかった。
「さて、教室にもどりましょうか」
そう言った梅雨ちゃんの言葉に続いて私達は教室へと戻っていった。
そして放課後HRの時間。
他の委員決めをすることになった。
「でっでは、他の委員決めを執り行って参ります!……けど、その前にいいですか!委員長はやっぱり飯田くんが良いと…思います!あんな風にかっこよく人をまとめられるんだ。僕は…飯田くんがやるのが正しいと思うよ」
その言葉に他の子達も賛同して、結局委員長を飯田君、副委員長を八百万さんと言う形でおさまったのだった。
.