第3章 原作編《入学〜USJ》
轟SIDE
食堂で昼食をとっている最中の事だった。
いきなり警報が鳴り響いて、セキュリティ3というのが突破されたらしい。
一気に生徒が出口へと雪崩れ込み、あっという間にその場はパニックに陥っていた。
この人混みの中にいても仕方がないと、端に避けようとした時だった。
人の波にのまれ今にも押し潰されそうな彼女が目に入った。
その瞬間、俺は無意識の内に手を伸ばし腕を掴んで、自らの腕の中に押し込んでいた。
すぐに頭を手で抑え、上を向けないようにして。
(俺は一体、何をしてんだ…)
後悔先に立たないとはこの事だと思った。
すぐには収まりそうにないこの場で離すわけにもいかず。
かといって、このまま抱き締め続けるのもあまり芳しくない。
こんな至近距離で、腕の中にある温もりに、抑えていた感情が溢れ出しそうで早く離れなければと思うのに、それが出来ない。
久しぶりに触れた髪はやはりとても心地よくて、まだもう少しだけこのままで、と思ってしまっている自分がいたのだ。
「大丈ー夫!!」
唐突に、少し遠くの方で叫ぶ声が聞こえてきた。
「ただのマスコミです!なにもパニックになることはありません。大丈ー夫!!ここは雄英!!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」
(あれは確か…飯田…?)
すると、徐々に周りも落ち着きを見せ始めその場が収まり始めていた。
(もう、大丈夫だな)
名残惜しくないといえば嘘になるが。
けれど、一刻も早く離さなければ周りに紛れてここを去ることができなくなる。
俺だと気付かれるわけにはいかない。
それでも少しだけという欲が出てきてしまい。
ほんの一瞬、髪に触れるだけのキスを落とし、腕を解き、こちらに顔を上げられる前に俺は人波に紛れてその場を去った。
さっきまで感じていた温もりと感触が手の中に残って、なかなか消えてくれそうになかった。
「今のって、轟くんと…………雪水さん…?」
.