第3章 原作編《入学〜USJ》
紫沫SIDE
続いて選ばれたのは「ヒーロー」Bチーム、「敵」Iチームの組み合わせ。
Bチームは轟君と障子君。
Iチームは尾白君と葉隠さん。
さっきの戦闘でビルが大分破壊された為移動してからの開始となった。
(ヒーローが動き出すまでまだ少し時間あるよね…ちょっと怖いんだけど…)
私は皆から少し離れた所にいる爆豪君の元へ向かった。
自己紹介の時に切島君に名前を教えてもらっただけで実際に話した事は一度もなかったのだけれど、どうしても気になる事があって声をかけに行ったのだ。
「爆豪君」
「あ゛?何だてめェ」
「ちょっと動かないでね」
「何言っ…!」
私は"治癒"を発動させた。
この"個性"なら使っても問題ない事は検査の時にわかっているから。
控えめに爆豪君の周りをキラキラした雪が舞う。
「は?お前、これって…」
「さっき腰打ってたでしょ?もし痛めてたらいけないと思って。もう終わったから動いてもいいよ。勝手なことしてごめんね」
爆豪君の言葉を遮って、私はモニターの前に戻った。
この場であまり詮索されても困るし、何より今は次の訓練が気になる。
(よかった。まだ始まってない)
轟君の"個性"を戦闘で見るのは初めてだったからとても気になっていた。
中学の授業は戦闘なんてしないから。
程なくしてヒーローチームがスタートした次の瞬間、みるみるビル全体が凍りついてあっという間に核を回収したのだ。
冷気が地下のモニタールームにまで届いている。
「仲間を巻き込まず、核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵も弱体化!」
「最強じゃねェか!!」
(流石、轟君…)
周りの皆は寒さで震えていたけど、私にとっては少し寒く感じるくらいで、何故だかその寒さは心地よくて。
久しぶりに見る"個性"はやっぱり綺麗で、見惚れていた。
そこからもテンポよく訓練は進み、全ての講評が終わり、授業は終了した。
私は本当にただ見ているだけだったけど、皆が自分の"個性"を使ってこんなにも活躍している姿を見ていると、影響されてしまったのか。
もし今の私が"個性"を制御できるようになったら、あんな風に皆とヒーローを目指す事が出来たりするのかなと柄にもなく思ってしまっていた。
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