第3章 原作編《入学〜USJ》
紫沫SIDE
早速の試練に私はなるべく席の方へと視線を向けて、何事もないように振る舞う事でなんとか席に着いた。
咄嗟にそうする事しか出来なかったのだ。
チラッと斜め前を見れば、彼は前を向いていた。
(私のことなんか、気にならないか…)
何だか中学2年の時のことを思い出した。
あの時は隣だったけれど、それでもこの距離の近さには緊張する。
気付けばHRは終わっていて、それと同時にクラスの人が机の周りに駆け寄ってきた。
「私、芦田三奈!よろしくー!」
「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
「俺ァ切島鋭児郎。よろしくな!」
「俺は上鳴電気!今度お茶でも行かね?」
「あ…雪水紫沫です」
一気に自己紹介をされて名前を覚えられるか不安だけれど、クラスの一員として迎えられた気がして少し安堵した。
入学についてを詳しく話したわけではないけれど、それでもやっぱり負い目を感じずにはいられなかったので、自分から話しかける勇気がなかったのだ。
その後も数人の人達が自己紹介をしてくれていると、チャイムが鳴ったのですぐにお開きとなった。
因みに私の前の席は八百万百さんと言うらしい。
喋り方が上品で、もしかしたらいいとこのお嬢さまなのかもしれない。
そして、斜め前の彼は一度もこちらに視線を向ける事はなかった。
(まぁ、名前は知っているから自己紹介は必要ないんだけど…)
それからすぐに先生がやってきて、午前は必修科目の普通の授業。
偏差値が高いのは知っていたからついていけるか心配ではあったけど、これならば問題なさそうだ。
お昼は大食堂で一流の料理を安価で頂けるらしい。
席が近かった八百万さんに声をかけてもらって一緒に食べた。
学校の食堂とはこんなにもクオリティが高いのかと少しびっくりした。
そして、午後の授業。
ヒーロー基礎学の時間がやってきた。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
「オールマイトだ…!!すげえや。本当に先生やってるんだな…!!!」
「銀時代のコスチュームだ…!」
「画風違い過ぎて鳥肌が…」
まさか、オールマイトが先生をしているなんて知らなくて、物凄く驚いた。
朝からの授業でテレビの中でしか知らなかった人達を目の当たりにして、ここに来て更に自分がとんでもないところに来てしまったと実感するのだった。
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