第3章 原作編《入学〜USJ》
轟SIDE
昨日は入学式の筈が個性把握テストをさせられ、今日からは通常授業が始まる。
朝のHRに先生が来るまでの間、クラスの連中が不自然に空いている席の話をしていた。
それは俺の斜め後ろにあるが、特段興味を持つ程ではなく傍観していると扉の開く音の後に入室してきたのは先生と次いで女子生徒。
その女子生徒に我が目を疑い、そんな筈はない有り得ないと脳内を否定の言葉が埋め尽くしていた。
「お早う。今日からクラスに1人増えるぞ。雪水紫沫だ」
言われずとも知っていたその名に否定も虚しく。
追い討ちをかけられた事でその正体を認めざるを得なくなったが、それでも。
何故、今、自分の目の前にいるのかが理解できずにいた。
「うぉおおお!女子だあ!!」
「しかも、結構可愛いくね?」
「雪水さんて言うんやぁ、何で1日遅れなんやろ?」
「女の子が増えるの嬉しいー!」
「是非お友達になりたいわ」
クラス中が騒ぎ出すも、先生の"個性"により一瞬で静かになると。
「コイツは少し事情があってな。"個性"の制御が出来ない上に周りに被害が及ぶ。当分の間、実技の授業は見学の予定だ。だからと言って余計な特別扱いをするつもりはない」
ここに来て俺の知り得ない事が告げられた。
"個性"の制御が出来ないとは一体どういう事なのか。
キャパオーバーの事ではなく、それとは別の事情とは一体何のことだ。
まさか雄英を受験していたなんて思っても見なかった。
以前に見ていた限りではここに受かるような"個性"ではなかった筈だが。
では、今言っていた制御の効かない"個性"というのが関係していると言う事なのだろうか。
結論の出ない推測を浮かべては、素直に事実を受け止めきれない己を誤魔化していた。
(何で、こんな所で…)
もう二度と会わないと思っていたのに、こんな所で再会するなんて…しかも同じクラスだ。
中学の頃は幸いにもクラスが分かれた事もあって、同じ学校にいても姿を見ないように避け続けていたというのに。
それに高校になれば学校も分かれて、雄英に来る筈ないからと安心していた。
それがこんなにも早く目の前に現れて、ましてやクラスも同じで、先程話が出ていた俺の斜め後ろの不自然に空いてる席。
思いがけず訪れた状況に動揺しているのか…
己の感情が揺さぶられるのを感じずにはいられなかった。
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