第3章 原作編《入学〜USJ》
紫沫SIDE
こうして私はあろうことか、雄英高校ヒーロー科に通うことになってしまったのだ。
その時ふと、ある人の事を思い出した。
(そう言えば、轟君が雄英の推薦を受けたって学校の噂で聞いた。もしかしたらいるのかな…)
いたとして、ただ気まずいだけではないのか。
学校にいた頃は他人同然だったし、こんな形で入学してくる私をどう思うかな…
そんな事を考えていると、塚内さんが言葉を続けた。
「それと、私生活のことなんだけどね。そちらも何かあった時のことを考えて、ミッドナイトの元で暮らしてもらうことになった」
「え?そこまで…」
帰る場所はもうない。未成年の私には保護者が必要だし、"個性"の事もあるから確かに誰かが傍にいる必要がある。
けれど、絶縁状態とは言え親族がいるのに、他人の家に転がり込んでもいいのだろうか。
「そんな事ないわ!妹が出来るみたいで私とても楽しみなのよ?」
なんて素敵なお姉さんなんだろうと思った。
初対面で、厄介な"個性"を持った人間をこうもあっさり受け入れてくれるなんて。
18禁ヒーローのイメージは薄れていた。
「…お世話になります」
「えぇ、どんどんお世話されて頂戴!」
それから、入学の手続きとか色々あってあっという間に日は過ぎていった。
私が入院している間に両親の葬儀は済んでいたらしく、遺骨は既にお墓に入っていて、直ぐに行く事はできないから遺影を作ってもらうことにした。
退院後はミッドナイトの家にお世話になり、部屋を一つ与えてもらい、その際本名を教えてもらった。香山睡さんというらしい。
なんだか少し、"個性"が幼馴染に似ているなと思った。
「明日から雄英の新学期が始まるんだけどね、手続きの関係上、紫沫ちゃんは翌日から通うことになるんだけれど、構わないかしら?」
「はい、何から何まで本当にありがとうございます」
人柄のお陰か、ここ数日の内に大分打ち解けることが出来ていた私達はお互いに「紫沫ちゃん」「睡さん」と呼び合うようになっていた。
そして、いよいよ雄英に通う日が明日に迫っていた。
卒業式の日から私の環境が180度変わってしまって、瞬く間にここまで来たけど、いよいよ明日から雄英での生活が始まる。
不安や緊張が大きいけど、少しだけ、期待に胸を膨らませて私は眠りについた。
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