第2章 中学生編
紫沫SIDE
3年に上がって、轟君とはクラスが離れてしまった。
また同じクラスになれるとは思ってなかったけれど。
それでも、同じクラスになれたら毎日顔を見る事ができたし、"個性"を近くで見る事もできたのに。
それすらも叶わなくなり、避けられているのかと思う位に轟君の姿を見る事がなくなって。
学校の噂で雄英の推薦を受けたというのを聞いた時はいよいよ遠い世界の人になってしまう気がした。
私は座学の成績は良かったから、偏差値はそれなりの学校を受験して合格した。
そうして迎えた卒業式の日。
「紫沫ー!学校が変わってもずっと友達だからね!」
「勿論!当たり前でしょ!」
幼馴染とも高校は別だった。
同じところを受けようと思った時もあったけど、やっぱりお互いに行きたいところに行くべきだという結論になったのだ。
寂しくないといえば嘘になるけど、お互いに決めた事だからもう何も言わない。
「じゃぁ、ここで。また連絡するねー!」
「うん。またねー!」
卒業式が終わってちょっとした打ち上げがあったので、両親は先に家へ帰っていた。
幼馴染と別れ、家に着いて玄関を開けた時。
何かがおかしい。
直感的にそんな言葉が浮かんだ。
「お母さん?ただいまー?」
その思いを打ち消す様にいつものようにリビングへ向かうと。
扉を開けた瞬間に見えた光景に自分の目を疑いたくなった。
床に倒れている両親、ベランダに立つ見知らぬ人影。
一体、これは、どういうこと?
「やぁ、お帰り。帰ってくるの待ってたよ。漸くここを見つけられたんだ」
「あ…あ…っ」
私はただ立ち尽くすだけで、今の状況を理解することもままならない。
「あー、そういえば、これなんの結晶か知ってる?たまたま見つけてさ、必死に守ろうとするから、そんな大事にされるとさ、壊してって言ってるようなもんだよね?」
そう言って、その人影はあっけなくその結晶を破壊すると。
途端に私の体の中でなにかが弾けた感覚がした。
「いや…いやあああああああ!!!!」
受け止めきれない状況に恐怖し追い詰められた私は無意識の内に"個性"を発動してしまっていた。
しかし、いつもの"個性"と違う。
私のはただ雪を降らせるだけの筈なのに、それは徐々に威力を増して視界を遮る程に荒れ狂っていたのだった。
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