第2章 中学生編
紫沫SIDE
轟君とお喋りしてるとあっという間に時間は過ぎて、気が付けばもう夕方だった。
「そろそろ、帰るか?」
「え?うわっ、もうこんな時間?ごめん、気付かなかった…」
「別に構わねぇ。雪水といれるのは嬉しい」
「…私も轟君と一緒にいられるのは嬉しいよ」
最近は大分、恥ずかしいと思ってたことも素直に言えるようになってきた気がする。
「家まで送る」
「いつもありがとう」
轟君はいつも帰りは家まで送ってくれる。
もうこれも暗黙の了解となっていた。
2人で部屋を出て玄関へと向かっている時だった。
玄関戸の開く音が聞こえて、誰かが入ってくるのが見えると。
「…誰だ、その小娘は」
凄い威圧感を持つ人が立っていて。
急に現れたその人が一瞬誰なのかわからなかったけど、すぐに見覚えがあることに気付いた。
NO.2ヒーローエンデヴァー、轟君のお父さんだ。
「うるせぇ。オマエには関係ねぇだろ」
初めて耳にする声音はあから様に負の感情がこもっていて。
お父さんのことをあまりよく思ってないのは知っていたけど、実際に対峙している姿を見るのは初めてだった。
「ふん、いつまでそのくだらん反抗を続けるつもりだ」
「…行くぞ、雪水」
「あ、あの、雪水紫沫です!お邪魔しました!」
轟君に腕を引っ張られてそのまま玄関を出そうになったから、慌てて挨拶をした。
勝手にお邪魔して挨拶もないのは、いくらなんでも無礼だと思ったから。
ただ、ちゃんと聞いてもらえていたかはわからないけど。
「ソイツのことは構うな」
轟君は私の腕を掴んだまま。
それ以上なにもできなくて、ただついていく事しか出来なかった。
外へ出て玄関の扉を閉めたところで轟君が口を開いた。
「悪ぃ。アイツがこんな時間に帰ってくると思わなかった」
「ううん、私も家族の人がいない時ばかりに来てちゃんと挨拶できてなかったから…」
「アイツはそんな事気にしねぇよ」
「うん…」
「家まで送る」
「いや、私は大丈夫だから!戻った方がいいんじゃ」
「送らせてくれ…」
私の腕を掴んでいる轟君の手に力が入って、少し痛かった。
「…じゃぁ、お願いします」
「ああ…」
腕を掴んでいた手が離れると、そのまま手を握られた。
この時は気付かなかったけど、轟君と手を繋いだのはこれが初めてだった。
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