第2章 中学生編
紫沫SIDE
「俺からも、雪水へのプレゼント貰ってくれるか?」
そう言って立ち上がると、壁沿いに置かれた普段使っているであろう座卓の引き出しから、包装紙に包まれた箱を取り出していた。
「うん、もちろん!」
差し出されたそれを受け取り、私もなるべく丁寧に包装紙を外して、中から出てきた箱を開けると。
「これって…ネックレス…」
「ああ。まさか同じもん用意してると思わなくて、さっき実は驚いてた」
デザインは違うけれど、まさかお互いにネックレスを送り合うとは、偶然にしても凄いと思った。
「ありがとう…すごく嬉しい!」
それは、雪の結晶がモチーフのネックレスで、控えめにキラキラした石が散りばめられていた。
「なんだかこれ、私の"個性"みたい」
「俺もそう思ったからそれに決めた」
「これ付けてみてもいい?」
「ああ」
上手く留め具が引っかからなくて悪戦苦闘していると。
「やってやろうか?」
「…お願いします」
自分でつけるのを諦め、轟君の方へ背を向けた。
「出来たぞ」
「ありがとう」
自分の胸元で揺れる雪の結晶を手に取って眺めていると、耳元で轟君の声がした。
「やっぱり似合うな」
肩越しに覗き込んでいるみたいで、感じたことのない距離感に鼓動が早くて。
「あ、ありがとう…」
「俺にもつけてくれねぇか?」
そのままそう呟くから声が近い。
「っいいよ」
あっさりと轟君は離れていったけど、さっきの余韻が残っているのか、耳が熱い。
すぐに動けないでいたら轟君に呼ばれる声がしてやっとのことで身体を動かすと。
座卓の上に置かれたネックレスを手にとってこちらに背を向ける轟君の首元にそれを回しかけた。
まだ鼓動が早くて、少し手が震えて。
留め具になかなか引っ掛けられなくて少し時間がかかった。
「…できたよ」
「ありがとう」
言葉と共にこちらに振り返った轟君との距離がとても近くて、鼓動がまた早まった。
なぜかお互い見つめ合ってしまいその場から動けない。
「…雪水」
ゆっくりと轟君の手が私の頬へと伸びてくる。
(いつもの合図だ…)
毎日繰り返されることで嫌でもわかってしまうようになった、2人の間での暗黙の了解。
私はそっと瞳を閉じていた。
仄かにココアの香りがして、ケーキよりも甘い口付けに蕩けるような心地良さを覚えた。
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