第2章 中学生編
紫沫SIDE
「…こっちのケーキも食ってみるか?」
「え?」
「ケーキ、好きなんだろ?」
「好き、だけど…」
口籠もる私を他所に、ケーキの乗ったフォークが目の前に差し出される。
もしや、これは、あーんというやつなのでは?と、数秒頭を悩ませれば。
「食わねぇのか?」
「…食べる」
催促をされてこれ以上悩むのをやめた。
私は意を決してそのフォークに乗っているケーキを口に含んだ。
「どうだ?」
「…美味しい」
すごく美味しかった。
(けど、やっぱり今のは恥ずかしかった!)
異性の手から食べ物を口に含むと言う経験が初めで、いっぱいいっぱいになりながらも残った自分のケーキを食べ終え。
轟君が用意してくれたココアを飲みながらお喋りをしていた。
そして、私は密かに準備していたプレゼントをどのタイミングで渡そうかと、実はソワソワしていて。
こういう事を今までしたことがなかったから、どう切り出していいかがわからずにいたのだ。
「…なんか気になることでもあんのか?」
「え?」
「いや、なんとなくそう思っただけなんだが」
気付かぬうちに表情に出ていたのだろうか?
それともおかしな動作をしていたのかな?
でも、これチャンスかもしれない。
「気になるというか…あのね、実はプレゼント、があって…」
鞄の中から包装紙に包まれた箱を取り出し、轟君の前に差し出した。
「お気に召すかわからないんだけど、良かったらもらってほしいな」
「ありがとう。開けてみてもいいか?」
「あ、うん」
目の前でプレゼントを開けられるというのはこんなにも緊張するものだったのか。
幼馴染にする時は反応が楽しみでワクワクしていたから、緊張なんてしたことがなかった。
包装紙を丁寧に外していき、いよいよプレゼントの箱か持ち上げられる。
「……ネックレスか?」
「うん。男の人にはどうかなって思ったんだけど…身に付けるものが渡したくて、でも腕とかだと"個性"使う時に邪魔になるかと思ったから」
「こういうのをあまり身に付けたことはねぇが、雪水から貰えたことは嬉しい」
「良かった。デザインは一応シンプル目なのにしたんだけど」
「ああ、大事にする」
喜んでもらえたみたいでよかった。
今日1番のミッションをクリアして肩の荷が下りた私はホッと安堵した。
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