第13章 原作編《新学期》
紫沫SIDE
「通形ミリオは俺の知る限り最もNo.1に近い男だぞ。プロも含めてな」
この目が捉えた光景は、何故か上半身裸の先輩と、その背後で床に倒れるクラスメイトだった。
「え?一体何があったの!?」
「一瞬で半数以上が…!」
「うそ…これを先輩一人で…?」
「No.1に最も近い男……」
不可抗力とはいえ先輩の戦闘スタイルを見逃してしまったことの重大さに、戻した視線は一ミリたりとも離すことを躊躇われる。
「……お前らは行かないのか?No.1に興味ないわけじゃないだろ」
「俺は仮免取ってないんで…」
「…同じく」
相澤先生の問いかけにも短く返すだけで、今度こそ目に焼き付けるべく次の一手を刮目して待った。
「あとは近接主体ばかりだよね」
「何したのかさっぱりわかんねえ!!」
「すり抜けるだけでも強ェのに…ワープとか…!それってもう…」
「無敵じゃないっすか!」
「よせやい!」
「何かからくりがあると思うよ!「すり抜け」の応用でワープしてるのか。「ワープ」の応用ですり抜けてるのか。どちらにしろ直接攻撃されてるわけだからカウンター狙いでいけばこっちも触れられる時があるハズ…!何してるかわかんないからわかってる範囲から仮設を立てて。とにかく勝ち筋を探っていこう!」
「オオ!サンキュー!謹慎明け緑谷スゲー良い!」
流石と言うべきか。
緑谷君の考察を頼りに、先輩の"個性"がどんなものかの予想が少しだけついた。
全体像の見えるここからならきっと、その正体が分かる筈。
「探ってみなよ!」
「!!沈んだ」
そう思ったのも束の間。
先輩は床の中へと沈み、地上からその姿が消えてしまう。
周りの反応から、それが新しい一手だと言うことを知り、その応用性に"個性"の特定は難を極めた。
一体どこに行ってしまったのか。
それを予想するよりも早く、先輩の姿は緑谷君の後方に突如として現れた。
鮮やかな裏取りに対して、緑谷君は予測をしていたかのようにその身を翻したけど…
「だが必殺!!!」
「うっ!!?」
「ブラインドタッチ目潰し!!殆どがそうやってカウンターを画策するよね。ならば当然そいつを狩る訓練!するさ!!」
「緑谷くん!?」
さっき言っていた「すり抜け」によってカウンターは決まらず、寧ろみぞおちに一発入れられてしまった。
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