第13章 原作編《新学期》
紫沫SIDE
翌日の朝、1日遅れで謹慎明けとなった緑谷君は教室に入るなり三日間の遅れを取り戻すんだと息巻いている様子だ。
チャイムが鳴り、姿を現した相澤先生は教壇に立つと早々に本題を切り出した。
「じゃ緑谷も戻ったところで本格的にインターンの話をしていこう。入っておいで」
てっきりインターンの話が始まるのかと思えば、何故か誰かを招きいれる様子に疑問符を浮かべる。
皆んなも考えていることは同じなのか、クラス中の視線はスラー…っとスライドしていく扉に集まっていた。
「ん?」
「?」
「職場体験とどういう違いがあるのか。直に経験している人間から話してもらおう。多忙な中都合を合わせてくれたんだ。心して聞くように」
そうして現れたのは、私達と同じ制服に身を包んだ人達。
一体誰なんだろうと考える間もなく、すぐに正体は明かされた。
「現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名――…通称、ビッグ3の皆だ」
相澤先生らしい最低限の紹介と共に教壇の上に並びたったのは男子生徒2人女子生徒1人の計3人。
その中で、先頭に立って入ってきた人の顔に見覚えがある気がして、記憶を手繰り寄せていると。
緑谷君のハッとした顔が横目に入り、それがいつだったのかを思い出した。
(そうか、緑谷君とゴミ出しに行った時だ)
顔だけが突如として現れ驚きで訳がわからないでいる間に消えてしまった、あの時の。
この広い校舎では同じ科でも学年が違えば顔を合わせることは殆どなくて、それが先輩かもとは考えもしなかった。
「あの人たちが…的な人がいるとは聞いてたけど…!」
「めっちゃキレーな人いるし、そんな感じには見えねー…な?」
「びっぐすりー」
口々に喋りだすクラスの反応を他所に、目の前のビッグ3は悠然とした姿で構えている様に見える。
雄英に入学してヒーローを目指したい気持ちが芽生えたものの…人前に立ったり目立つことはあまり得意ではない。
しかしヒーローというのは必然的に人の注目を集める存在だってことに、今更になって気付いた。
プロになれるのかはまだわからないけれど。
雄英でヒーローを目指すということは、少なくとも他校のヒーロー科に比べると人目につく可能性は大いにある。
(私が3年になる頃には、目の前にいるビッグ3みたいな…あんな風に堂々と人前に立つことができるのかな…)
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