第13章 原作編《新学期》
紫沫SIDE
驚きと不振に染まる私達の顔をものともせず喋り続ける快活な声は異様な明るさに思えた。
「まァ、俺のことはじきにわかるんだよね。とにかく元気があって何よりだよね!!とりあえず言えることはなんか噂になってたから気になって見に」
そしてどう考えても喋りの途中で、声の主は地中の中へと消えていった。
2人して辺りをキョロキョロと見回してみるも次に現れる気配はなく、結局正体を突き止めることが出来ず終いで、私達の間には暫しの沈黙が流れる。
「……」
「……」
「……何…だったんだ」
「…謎…だね」
ようやく絞り出した声には消化しきれない驚きと疑問がありありと反映されていて、吐き出してみたけど答えは出るはずもなく。
ゴミ捨て場へと歩き出しつつ、話題は続いた。
「……どっかで見たことある気が…」
「…そう言われてみれば…何処だっけな…」
「んー……あれ?そういえばあの人、僕たちのこと…」
「あぁ…親密な関係?とか言ってたね」
「それって……」
「所謂お付き合い的なことかな?」
一瞬の沈黙の後、持っていたゴミ袋を手放しそうな勢いで緑谷君は慌てふためき始めた。
「どどどどうしよう!?」
「お、落ち着いて緑谷君」
「で、でも!ゆ、雪水さんには…轟くんが…!」
「うん。でも、驚きでそれどころじゃなかったし…否定する間もなかったし…ね?」
「ぼ、僕なんかと、勘違いされて…ごめん!!」
緑谷君には一切非がないというのに、謝られるとこちらも申し訳なくなってくるというもので。
釣られて私も謝罪を述べていた。
「ううん、私の方こそごめんね。何とも思ってない子と勘違いされて、緑谷君だって良い迷惑だよね」
「いやいや!迷惑だなんて…そんな事ないよ!」
「え?」
「あっ…い、今のは決して変な意味じゃなくて…!」
互いによく分からない言い合いになっていて、思わず笑いが込み上げる。
「うん、わかってる。緑谷君が私に特別な好意を寄せるとは思ってないよ」
「あの、雪水さんがどうとかじゃなくて…その、僕はまだ、そういうの…よくわからないっていうか…」
言われて、さっきの慌てっぷりといい、緑谷君はあまり恋愛に免疫がないのかもと思った。
同時に仮免試験で見たお茶子ちゃんの様子が脳裏をよぎって、野暮になってはいけないとその話題にはそれ以上触れずにゴミ捨てを済ませた。
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