第13章 原作編《新学期》
紫沫SIDE
爆豪君の発言に対して、飯田君の眼鏡がピクリと反応した気がした。
「それは聞き捨てならないぞ爆豪くん!俺の眼鏡はれっきとした度入り眼鏡だ!常に万全を心がけこまめなメンテナンスを施し今日も視界良好だ!!」
飯田君の眼鏡スイッチを押してしまったようだ。
触らぬ神に祟りなしとばかりにこれ以上は関わらない方がいいと思い静かに2人から身を引きその場から離れると、大きなゴミ袋を抱え寮の外へと向かう緑谷君が目に入った。
「緑谷君!私も一緒に運ぶよ!」
「雪水さん、ありがとう!でも僕一人でも運べるから」
「同じ謹慎の身なんだから遠慮しないでよ?」
「それじゃあ…これ、お願いできるかな?」
「もちろん!」
寮に帰ってきた焦凍君と色々話したい気持ちはあるけど、謹慎としてやるべきことは疎かには出来ない。
緑谷君と共にゴミ捨て場へと足を伸ばした。
授業はどこまで進んだのだろうかと他愛無い会話をしながら壁伝いに歩き、「ゴミ捨て」と書かれたプレートのあるところに差し掛かったところ。
ニコッとした顔が文字通りその壁から生えてきて、私達の足はその場に急停止した。
「ゴミね。食品トレイとかも可燃で出しちゃって大丈夫だからね」
「「…………あ……はい…」」
人間、心底驚いた時は対応しきれずただただ唖然としか出来なくなるみたいだ。
声を上げる事も飛び退く事もなく、小さくハモって返事をするとコクッと頷いた顔はスッと壁の中へと消えていった。
「……今のは…」
「……何、だったんだろう…ね…」
今し方目の前で起きた信じがたい出来事にすぐには動けずにいると、次に足下の地面の中からさっきの顔だけが再び生えてきた。
「元気な1年生って君だよね!?隣にいる彼女はもしかして親密な関係だったりするのかな!?」
二度目ともなれば、今度こそ私達2人は驚きに真っ当な反応を返す事となった。
「うわあ!!?」
「きゃあ!!?」
「ビックリしたよね!!?悪いことをしたなぁーー!!ビックリすると思ってやってるんだけどね!!」
「何なんですかあなたは!?」
「アハハハハハ何なんだろうね!!俺も何してるんだろうって思うんだよね!!極まれに!!」
「自覚はあるんですか!?」
驚きは更に続いて、その顔だけと会話をしている緑谷君の隣で私はそれを眺めているだけだった。
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