第13章 原作編《新学期》
紫沫SIDE
「雪水さんはその幼馴染みと仲が良かったんだね?」
「そうだね。幼馴染みであり、親友だったよ」
焦凍君と中々話せないでいた私の背中を押してくれて、苦しくて辛い時には傍にいて涙を受け止めてくれた。
今は離れてしまったけど、きっと爆豪君の言うように幼馴染みであることは何処にいたって変わらない。
「雄英にいる間は会えないだろうけど、その分ここで頑張らなきゃいけない事があるし…それに、ここにも頼れる友達が沢山いるから……ね?爆豪君。さっきの言葉嬉しかった。ありがとう」
「あ゛?俺は何もしちゃいねェ」
「かっちゃんがお礼を言われてる…!?」
「そうそう。爆豪君て結構優しいところあるよね」
「かっちゃんが…あの、かっちゃんが……優しい…!!?」
「あ゛あ゛!?黙れや、クソが!優しくねぇわ!」
ついさっきまではあんなに黙々としていたのに、気が付けば謹慎中である事が疑わしくなる位3人で賑やかに朝の掃除を終えて。
それぞれ部屋に戻ると、私は反省文に取り掛かった。
半分程埋めたところで集中力が切れてしまう。
学校に行った皆は今日から授業がある為帰ってくるのは夕方。
まだ陽は天辺を少し過ぎた位だから後数時間は帰ってこない。
物思いに耽っていると見送る時に感じた物寂しさが振り返して、それを振り払うべく予習したり部屋の片付けをして気を紛らわせていたら陽は傾きを見せ。
一階に降り3人で夕方の清掃をしていると、程なくして授業を終えた皆が帰ってきた。
十数人が寮内へ入ってくる中でも真っ先に目が向かうのはやっぱり焦凍君。
後方にその姿を見つけると、かち合った瞳同士は密かに見つめ合って。
「おかえり」
「あぁ、ただいま」
少しだけ特別な感情のやり取りは騒がしくなる周囲に隠されてその真意を誰にも気づかれることなく笑みで終えた。
「んっん――…」
その傍らで、シンデレラの継母さながらに窓の枠下にスーッと指の先を這わせる峰田君とその隣で爆笑している瀬呂君の姿が。
「このホコリは何です爆豪くん?」
「そこデクだザけんじゃねえぞ。オイコラてめー掃除もできねえのか!!」
「わっ、ごめん。あ…皆部屋のゴミドア前に出しといて。まとめます」
3人でも案外楽しかったけど、やっぱり皆がいる賑やかさにはまた別の明るい空気感があって。
どれも私には心地が良いものだった。
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