第12章 原作編《デクvsかっちゃん》
紫沫SIDE
私の顔が向いた事に気付いたのか、たまたまだったのかは分からないけど。
爆豪君の顔もこちらに向いて、目が合って。
そこには前に知った赫い色の瞳があって、前に思い描いた焦凍君の紅と今日は少し違って見える。
「っとに、何なんだてめェはよォ…さっきっから、ワケわかんねぇことばっかいいやがって……」
一瞬だけ合った目はまたすぐに下を向いて、私の目には爆豪君の頭頂部が見えていた。
そして少しだけ前に倒れたその頭は私の肩に当たった事でその動きを止める。
相変わらず口調は穏やかさの欠片もないけど、トゲトゲしさはいつもの半分も無い気がした。
「私にとってはそうなんだから。ちゃんと受け取ってよ」
「……攫われた事に感謝するなんざ、意味わかんねェわ…」
常日頃は高いところにある頭が今は目線の下にあって、グラウンド・βで覚えた印象と見た光景のせいか。
思わず手が伸びて、性格に似てクセの強い髪を控え目に撫でていた。
「あの時、あの場で、一人じゃなくて良かった。誰かがいてくれて、爆豪君がいてくれて本当に良かった」
意外にも振り払われることはなく、寧ろ少し肩にかかる重さが増した気がする。
物理的距離が近付いて、ほんの少しでも心を許してもらえたのかもって。
諦めたはずの気持ちが振り返した。
「……そのお返しってことで、構うくらいさせてよ。私に出来る事ならなんだってするから」
性懲りもなく同じことを繰り返されたことで観念したのか、拒絶されることはなく。
しばらくの沈黙の後、独り言のような呟きが聞こえた。
「……バカかテメェは。簡単に男に向かって何でもとか言いやがって………ブチ犯したろか」
「え?何?最後の方、聞こえなかった」
この至近距離でも聞こえない位の小声で何て言われたのかがわからなくて、聞き返すのと同時に撫でていた手も離した。
「何でもねェわ、クソが」
その言い方は限りなくいつもの暴言に近づいていて、肩に乗っていた重みはいつの間にかなくなっている。
今私の目に映っているのはさっき一度見た赫い瞳。
「ねぇ…爆豪君の瞳の色って変わった?」
「あ?またてめェは、何フザケたことぬかしてんだよ」
「何かね、前見た時とは違う気がして…」
その違いを見つけようと、ジッと赫い色を見つめた。
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