第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
結果発表の後、合格者のヒーロー仮免許証発行を始めとして諸々の手続きが全て終わり荷物を纏め、寮に帰るべくバスに向かっている時のこと。
「おーい!!轟!!また講習で会うな!!けどな!正直まだ好かん!!先に謝っとく!!ごめん!!」
ドドドドドと夜嵐さんが駆け足で近付いて来て、謝罪の言葉を告げたかと思うとそのままの勢いで走り去って行った。
「どんな気遣いだよ」
「こっちも善処する」
「彼は——大胆というか繊細というか…どっちも持ってる人なんだね☆」
そう言えば敵対心剥き出しだった目付きは面影を消している。
結果発表の時に頭を下げていた事も合わせて、もしかしたら夜嵐さんに対しての認識を間違っていたのかもしれない。
そんな思いから走り去る後ろ姿を追って駆け出していた。
「あ、あの!夜嵐さん!」
「ハイ!」
あまり面識のない人に声を掛ける多少の緊張感と、声量のある夜嵐さんに対して普段よりも大きめに発した声。
ちゃんと届いたのは良かったものの、その倍のボリュームで返事が返ってきて、一瞬怯んでしまいそうになるのをなんとか踏み止まる。
目線を合わせようと改めて見上げた顔はとても高いところにあって、あまりの身長差に首が痛くなってしまいそう。
でも真っ直ぐな夜嵐さんに何かを伝えるには、こちらも真っ直ぐに向き合わなくてはと必死に視線を通わせた。
「あんたは確か……」
「雪水紫沫です」
「雪水さん!俺に何か用っスか!?」
「救助演習の前に言った事なんですけど……ごめんなさい!!」
「んん!?」
「あの時は、焦凍君のことを一方的に悪く言われてる気がして…よく考えもせず言葉を投げてしまったので…」
「ショウトクン……ああ!轟のコトっスか?」
「うん、轟焦凍君のこと。それで貴方のこと勘違いしてたみたいだから。私もちゃんと謝りたくて…夜嵐さんのこと、よく知りもしないで突っ掛かってごめんなさい」
「イヤ!あの事は俺のせいでもあるっスから!!」
竹を割ったような人だと、最初に抱いた印象が本来の姿なんだって、夜嵐さんのことをもっとちゃんと知りたいと思った。
だから何処かでまた会えたらそのキッカケになるんじゃないかって。
私と同じ「や行」の夜嵐さんの名前が合格者の中になかったことと、特別講習の話が出た時に返事をしていたことを思い出した。
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