第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
「ごめん!!あんたが合格逃したのは俺のせいだ!!俺の心の狭さの!!ごめん!!」
八百万さんに声を掛けられても呆然とスクリーンを見上げていた私の耳にクラスの誰でもない声が入ってきて、思わず顔を振り向かせると。
そこに見えたのは試験前にも目にした地面にのめりこむ勢いで頭を下げている夜嵐さんの姿。
そしてそれは、焦凍君に対して向けられているものだった。
「元々、俺がまいた種だし…よせよ。おまえが直球でぶつけてきて、気付けた事もあるから」
「え…?焦凍君…?」
「轟…落ちたの?」
咄嗟に再びスクリーンに向けた目が辿ったのは「と」で始まる名前の列で。
当たり前のように並んでいると思っていた「轟」と言う文字を見つけることが出来なかった。
「ウチのツートップが両方落ちてんのかよ!」
「暴言改めよ?言葉って大事よ。お肉先パイも言ってたしさ」
「黙ってろ。殺すぞ」
「両者ともトップクラスであるが故に自分本位な部分が仇となったわけである。ヒエラルキー崩れたり!」
周りの反応から爆豪君も落ちたのだと言うことを知った。
まさかクラスの中でも誰もが認める実力を持った2人が落ちていたなんて思いもしなくて。
ある意味自分の結果を見た時以上の衝撃を受けた。
自分も同じだと、声を掛けるのが躊躇われる誰もが口を閉ざす空気の中、次に聞こえたのはマイク越しの声だった。
《えー、全員ご確認していただけたでしょうか?続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されてますので、しっかり目を通しておいて下さい》
委員会の人から手渡されたプリントを見ると、採点は50点を下回っていた。
《ボーダーラインは50点。減点方式で採点しております。どの行動が何点引かれたか等。下記にズラ—っと並んでます》
自分でも薄っすら自覚のある至らない点もあれば、ヒーローには相応しくない人物であるという批判めいた内容も書かれていて。
改善すべきところをこうして提示してもらえるのは有難いけれど、後半部分に関しては何処か納得のいかないものが含まれている。
こうして結果が出てる以上それに難癖をつけることはいけないことだと思いつつも釈然としない気持ちを抱きかけて、不合格ということはどうしたって変わらないのだから指摘された事を改善していくしかないと言い聞かせた。
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