第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
結果発表の為に再び会場へと足を踏み入れた1-Aのメンバーは男女共に一塊となって、その時をソワソワと落ち着きのない様子で過ごしていた。
「どうかなァ…」
「やれることはやったけど…」
「どう見てたのかわかんないし…」
「こういう時間いっちばんヤダ」
「人事を尽くしたなら、きっと大丈夫ですわ」
はっきりとしない自身の記憶にばかり気を取られていたけど。
救助演習の途中で援護の為に別れてから初めて焦凍君の姿を目にしたことで、そちらはどうだったのかが気になった。
声をかけようと近付くにつれて、纏う雰囲気があまり良くない事に気が付いて。
自分もあまり人のことを言えない気持ちではあるにせよ、焦凍君にも何かがあったのならそれを気にせずにはいられなくなり、口を開きかけたタイミングだった。
《皆さん、長いことおつかれ様でした。これより発表を行いますが…その前に一言。採点方式についてです》
前方に用意されていた壇上にいつの間にか姿を現していた目良さんの声がマイク越しに響いて、声を掛けることは叶わなかった。
《我々ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる二重の減点方式であなた方を見させてもらいました。つまり…危機的状況でどれだけ間違いのない行動をとれたかを審査しています。とりあえす合格点の方は五十音順で名前が載っています。今の言葉を踏まえた上でご確認ください…》
壇上にある大きなスクリーンの画面一杯に映し出された合格者の一覧に、結果を知る方が優先になった私の目は迷うことなく最後尾付近を目指した。
そして見つけたのはーー…
("遊佐"…が最後……)
あるとすればその次に来る筈の「雪水」の名前は画面の中になかった。
「合格…出来なかった……」
見落としようのない名前だと言うのに、俯かせた視線をもう一度スクリーンに移してみるけど、やっぱりそこに「雪水」の文字はなくて。
喜びで上がる周りの声がやけに遠く聞こえた。
「雪水さん……」
「……ダメ、だったよ」
きっと同じ並びだから直ぐに気付いたであろう八百万さんが声を掛けてくれた。
何か、言葉は何でもいいから、明るい声ですぐに何でもない風に装えたら良かったのに。
そんな余裕は一つもなくて、気持ちのまま、沈んだ声で一言発するのがやっとだった。
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