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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第11章 原作編《仮免試験》


紫沫SIDE


一瞬だけ。
気を失っていた様な気がする。

「あの、ありがとうございます」
「え?……あっ、足の具合はどうですか?」
「"治癒"のお陰で痛みが引いて、これなら歩けそうです。本当にステキな"個性"ですね」

最後の言葉を口にする刹那、何か含みを持った言い方に聞こえて向けられている瞳は愉し気に歪んでいるかの様だ。
けれどそれも気のせいと思えてしまえる程度で、今ではニコリとした表情を浮かべている。
目の前にいるのはHUCで、仮免試験の採点者でもあることを思い出し、兎に角救護所に連れて行かなくてはと余計な考えは角に追いやることにした。

「歩けそうなら何よりです。これから安全な場所まで誘導しますので付いてきて下さい」

木々の生い茂る中を抜けてひらけた場所に出てきて少しした頃。
会場内に「ビーーー」という通知音が鳴り響いた。

《えー只今をもちまして配置された全てのHUCが危険区域より救助されました。まことに勝手ではございますが、これにて仮免試験全行程終了となります!!!》

すぐ後に目良さんによるアナウンスが流れる。

「終わり…?」
「みたいですね」
《集計の後、この場で合否の発表を行います。怪我をされた方は医務室へ…他の方々は着替えて、しばし待機でお願いします》

そうして終わりを告げた救助演習は何だかあまりすっきりとしない思いがした。
アナウンスされるまま着替えをする為に更衣室に向かうと、他の皆の姿を発見して口々にどうだったのかを話しながら制服へと身を包んでいく。

「そういえば紫沫ちゃんの姿が途中見えなかったわ。どこに行っていたの?」
「ああ、水場の近くで要救助者の声がしたからそっちに行ってたんだけど…」

始まってすぐは焦凍君達と一緒に水場で救助活動をして、その後皆とは離れた所に救助に向かったまでははっきりと覚えているのに。
それから先の出来事を上手く思い出すことが出来ない。
でも足を負傷したお姉さんに"治癒"を施して救護所まで無事誘導した事は確かで。
何だかそれ以外にも何かあった様な気がするのに、夢を見ていたみたいにあやふやだ。
そうやって考え事をしていたせいで結局皆との会話は気もそぞろで着替えを終えて、結果発表の場へと足を進める間もまた会話に加わることなく巡らせた思考だったけど、それすらあやふやになり始めていた。


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