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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第11章 原作編《仮免試験》


紫沫SIDE


「ご名答。覚えてくれてて何よりだよ」

何度聞いてもそれは間違いなく、数ヶ月前横たわる両親の先に立ち、合宿で私を攫い、一時でも絶望を予感させた声で。
鼻から下が晒された素顔を初めて目にするも、声が中性的なテノールにもアルトにも聞こえて、目の前にしている格好のせいか女性に見えなくもない。
それでも以前に見た姿形を思い起こせば。
顔の造形は見えなくとも髪は短く、身長も170cm近くあって、同性とは言い難い口調から異性であることに疑いはなかった。
突然の出来事に判断力は欠如して、疑問ばかりが頭を飛び交っている。

「な、んで、こんなところに…」
「誘われたんだよ、遊びに行こうって。こっち側で正解だった。君は本当にヒーローになろうとしてるんだね」
「遊び……?」
「これ以上は企業秘密。自分の目で見た事だけわかればいい。それが事実で全てだから。例えば、君の両親の事。とかね」
「っ!?」
「まさかわかってなかった?わざと姿を見せたつもりだったんだけどな。あの時二人を殺したのは、僕だよ」

改めて、疑う余地のない断言に感情の昂ぶる覚えがした。

「どうして…っ!」
「おっと、あまり大きい声はださないでくれる?わざわざ人目のつかない場所を選んだのに意味がなくなる。あまり時間もないしこの話はここまで。それにあの時のことを今更知ったって、もう手遅れなんだよ」

驚きで距離を取るべきだった事を失念していた。
それでも油断していたわけではないのに、目にも留まらぬ速さで首には業の右手がかけられ。
薄く息を吸い込めるギリギリのところで、でも声を遮るには充分な握力が手に込められている。

「また大声出されて誰かに見つかるのは面倒だ…少しの間黙っててもらうよ」

心臓は早鐘を打ち続け、それが息苦しさからなのか感情によるものなのかはわからない。
数秒で喉にかかる圧迫感から解放されるのと同時に、肺が不足した酸素を求めて勢いよく吸い込んだのものだから咳き込んでその場を動く事が出来なかった。
それでも、この状況に黙ってなんていられなくて口を開いたその時。

「!!…!……!?」
「だから言ったよね。少しの間黙っててもらうって」

声を出しているつもりなのに音になって耳に響いてこない。
何度喋ろうとしても結果は変わらず、何故こうなったのかが微塵もわからなかった。


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