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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第11章 原作編《仮免試験》


紫沫SIDE


声が聞こえてきたであろう方角だけを頼りに奥へと進みながら、こちらからも声を掛け続け。
漸く人影らしきモノを目が捉えたのは、ともすれば見逃していたかもしれない、殆ど人目につかない場所で。
近づくにつれ露わになってきたのは足を負傷しているのかその場にへたり込む姿。
顔を俯かせ長い髪に隠れて表情を伺う事は出来なかった。

「ヒーローです!もう大丈夫ですよ」

駆け寄る気配に気付いたのか、頭が少しだけ持ち上がる事で見えたのは年上と思しき中性的な面持ちの女性。
目に見えて酷い外傷は見当たらないものの、足首を手で抑えている様子に立ち上がる事が出来なくなっているのではと予想を立てた。

「足を負傷されましたか?」
「左足首を、捻ってしまったみたいで」
「他に痛めたところはないですか?」
「大丈夫、です」
「では足首に"治癒"を施しますね」

なるべく不安を拭える様に、症状の確認を急ぎながらも温和な語りと柔らかな表情を心掛けて。
捻挫なら"治癒"で治せば歩いて救護所まで連れて行ける。
そう判断し"個性"を発動していると。

「救けてくれるんですか?」
「勿論です!すぐに動ける様になるので、そしたら救護所までご案内します」
「本当に、誰でも救けてくれるんですか?」
「はい。救けを求める人がいれば誰でも」
「それが……両親を殺した相手だとしても?」
「……え?」

瞬間的に変わった声音と耳を疑いたくなる発言に"治癒"する事も忘れて。
数秒後にその意味をじわじわと理解し始めるにつれて、身体が強張っていくのがわかった。
小さく飲み込んだ唾と共に喉の油も一緒に流れてしまったのか上手く声が出せなくて、仮免試験とは全く別の予期せぬ緊張感が襲った。
今しがた聞こえたのはつい数週間前に聞いた声と酷似していて。
でもあの時に見た姿とは違う。
そう否定したいけど、あの時に見たのはマスクに隠された顔だった。
髪型だってあの時は短いものだったけれど、もし目の前の胸元まで伸びたモノがウィッグだとしたら。
後はもうあの殺意のこもった鋭い眼と、この声しか判断材料はない。

「この姿じゃ誰かわからないかな。でも素顔は晒してなかったし、君ならこの声だけでわかるよね?」

口元に態とらしい笑みを浮かべて、聞こえたのはやっぱり聞き覚えのある声で、それは…

「……そ、の声は………業…」


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