第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
程なくして着いた水場の付近を捜索していると。
「轟くん、梅雨ちゃん、雪水さん、あそこ!」
「た、救けてー!」
「私が行くわ」
葉隠さんが水の中で岩場にしがみついているHUCを見つけ、陸地まで引き上げるのは梅雨ちゃんに任せて。
「暖める為に燃えるものを集めよう」
「任せて!」
「了解!」
焦凍君の指示で薪を集め火を起こすと、梅雨ちゃんに連れられやってきたHUCを側に座らせ一先ず怪我の具合を確認する。
幸い目立った外傷は見当たらず、私の"治癒"で事足りる程度のものだった。
私が傷を診ている間に他のメンバーもこの場に訪れて、手分けして救助活動を行なっている時の事。
大きな爆発音が次々と鳴り響いて、反射的にそちらを見やれば少し離れた場所に上がっている爆煙を目の当たりにした途端。
《敵が姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ救助を続行して下さい》
流れてきたアナウンスに、試験のシナリオがとんでもない事態へと悪化した事を理解した。
一番大きな爆発が起きたのは会場を囲む壁の辺りだったようで、見事に破壊され大きな穴が出来ていた。
そこから敵と思しき複数の人影がぞろぞろ姿を現してきているけど、その場所というのが…
「救護所のすぐ前!!」
「あんな近くに敵出すなんてイジワル!」
「あそこには怪我してる人が沢山いるのに…っ!」
「ここの救助もまだだけど、あっちを見て見ぬフリは出来ないわね…」
梅雨ちゃんの言う通りだ。
新たな問題を解決するには新たな人手が必要となる。
その新たな人手に求められるのは、敵を制圧する為に必要な戦闘力を持つ人。
「焦凍君…!」
「ここは任せるぞ!」
「うん!気をつけてね!」
この場の誰よりも早く駆け出した人は間違いなく高い戦闘力を持ち合わせている。
ならば、私はここに残っても大丈夫だと判断して。
「梅雨ちゃん、葉隠さん。一刻も早くここの救助を完了させてから、私達もすぐに向かおう!」
「ええ、わかったわ!」
「あっちにも要救助者発見!!」
葉隠さんの指示の下、再び水の中へと向かう梅雨ちゃんを見送った後もう少しだけ薪を追加しようと木を求めその場を離れる。
「た、すけ、て…」
そんな折に微かに耳を掠めた声から林の奥に要救助者がいる事を知り、一刻も早く救けねばと、単身そこへ向け走り出した。
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