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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第11章 原作編《仮免試験》


紫沫SIDE


(お茶子ちゃん…?)

走り去る背中を見つめる眼差しに、声をかけるのを躊躇われて。
いつかの晩、寮で見た姿を思い出した。
今私が目にしている表情は決して頬を赤らめたり慌てていたりしているわけじゃなくて、寧ろとても落ち着いている。
けれどその瞳の奥に宿しているのはあの日と同じく焦がれる想いだと、一時も外す事なく注がれる視線がそれを物語っていた。

(でも、あの目は私とは違う…)

想いの形は人の数だけある。
何か覚悟にも似た眼差しに、特別な感情を抱きながら心の内で留めている様な…
それが定かかはわからないけれど、横槍を入れるべきじゃないと。
思わぬ形で想い人の正体を知ってしまったけど、このことは本人が口にしてくれるその時まで胸の内に閉まって。
静かにその場から身を翻し先に行った皆の元へと急いだ。
何をすべきかわかった今、足を止めているわけにいかないから。

「スタート地点から近いこの辺りはやはり人手も多くあるな」
「そうだね。もう少し先の方に行った方がいいかも」

すぐに追いつき、辺りを見回しながら救けを求める声に耳をそばだてていると。

「意識はあります!おじいさんです!」
「瓦礫が邪魔だ!浮かしてどかす!」
「お待ち下さい!」
「!」
「周囲をよもっとよく見て下さい。壁部に隣の建物が倒れかかり偶然バランスが保たれている状態ですわ…!うかつに動かすと崩壊する恐れがあります!」
「そうか…!いかん…」
「壁を支える支柱をつくってから救助を!組むのに時間を要していまいますが…支える個性の方がいらっしゃれば早いんですけど…」
「そこは」
「俺らに任せとけ!」

八百万さんの声が聞こえて、早速救助に当たる姿が目に入る。
実地経験は浅くともそれを補えるだけのクラス成績トップを誇るその知識は遺憾無く発揮され、この場に必要な人材は揃っていた。

「既に何人かはそうだが…一次と違いバラけた方が良さそうだ。少数編成で動こう」
「なら、私は得意な川の方に行くわ」
「俺も行こう」
「右に同じく!」
「私も!」
「よし!クラスだけでなく他校ともコミュニケーションを取らねば!より多くの命を救わん!!」
「っしゃ!!」
「八百万くん!我々は四散し行動する!」
「了解です!」

梅雨ちゃんの言葉に、焦凍君と葉隠さんと共に少し離れた目的地へと走り出した。

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