第2章 中学生編
紫沫SIDE
この春から近所では有名な凝山中学に進学した私は、幼馴染の香坂 華純(こうさか かすみ)と共に"個性"一斉診断・登録の場にいた。
私の"個性"は"雪"。
その名の通り雪を降らすことができる。ただし、キャパオーバーすると体温が急激に下がり酷い時には仮死状態に陥り1〜2日程目を覚まさない事があるらしい。
らしいと言うのは、自分からすると意識がない状態なので自覚がないのだ。
診断が終わり、華純の元へ向かおうとしたその時、ある光景が私の目に止まった。
「綺麗…」
無意識のうちに口から溢れた言葉。
目線の先には右手で氷を出したかと思えば、次は左手に炎を纏っている男子の姿。
目を奪われ視線を外す事が出来なくなって。
ほんの僅かな時間だった筈なのに一瞬にして心を囚われていた。
何故こんなにも惹き寄せられるのだろうか…
(同じ自然現象を操る"個性"だから?)
いや、それにしても今まで見てきた中でそれは群を抜いて私を魅了する。
さっき見た氷と炎の余韻が抜けずに視線を外せないでいると、その持ち主はあまり見かけたことのない左右で分かれたツートンカラーでそれぞれ紅と白というなんともおめでたい髪の色をした人だった。
「紫沫?何ぼーっとしてんの?」
「…え?…あっ、なんでもない!」
華純に声を掛けられ彼のことをずっと見ていたことに気づきバレたらまずいと慌てて目線を外した。
しかし、しっかりその視線の先を見破られニヤニヤしながら幼馴染はこちらに視線を向けてくる。
「なになにー?早速気になる人でも見つけちゃった?」
「違う!いや、気になりはしたけど…でも、なんか違うから!!」
決してお年頃の女の子達が抱くような気持ちで気になったのではないと否定しても、慌てて否定した事が裏目に出てしまい帰るまでその話題でからかわれ続けることになってしまった。
(…あの"個性"…似てる…)
そして、その彼もまた私の"個性"を見ていたなんて、その時は知る由もなかった。
.