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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第11章 原作編《仮免試験》


紫沫SIDE


《傷病者に扮した「HUC」がフィールド全域にスタンバイ中。皆さんにはこれから彼らの救助を行ってもらいます。尚、今回は皆さんの救助活動をポイントで採点いき、演習終了時に基準値を超えていれば合格とします。10分後に始めますのでトイレなどは済ましといて下さいね——…》

ざっくりとした試験概要だけを述べるとスピーカーから聞こえるアナウンスは終わりを告げた。
もう少し詳しく知りたい気持ちはあるけど一方通行のアナウンスでは聞けるはずもなく、今ある情報と言えばスクリーンに映し出されている躊躇なく破壊されたフィールドの風景。

「それにしても、いきなりの爆発には驚いたよ」
「唐突に事を起こすのは雄英と同じだ。見てて思ったんだが、あの状況何処かで見覚えねぇか?」
「んー……あ、もしかして…」
「多分、それだろうな」
「神野区…」

あの時は逃げる事に精一杯で周りに目を向ける余裕がなかったけど、一番被害の大きい所にいて嫌でも目に付いていたのか、記憶の中にはちゃんと残っていた。
悲惨な現場で死傷者も多くいた事は後日知ったんだけど。
本来自分の目指すところは、救けられる側ではなく救ける側なのだ。
それを今試されているのだと改めて自覚した。

「焦凍君、頑張ろうね」
「ああ」

決して簡単な道のりでない事は一次からも身に染みていたけど、重ねられた手の温もりがどんな困難も2人でなら大丈夫だと勇気をくれて。
貰うばかりではなく、私からも同じ気持ちだとその手を握り返した。

「そうだ。何か食べる?」
「いや。今はこれがあればいい」

握り合う手を引かれて、何をするのかとその行方を辿っていけば。
持ち上げられた手の甲が焦凍君の口元を隠すように充てがわれて、柔らかな感触に口付けられていると気付いた。
こちらに注がれたままの視線に吸い寄せられて、周りに大勢の人がいる事も忘れて、見つめあったまま逸らせなくなる。
唇に触れている部分がやけに熱く感じて、その行為に惹かれて静かにトクントクンと早さを増していく鼓動と放されることのない熱に夢中になりかけて……

「士傑こっち来てんぞ」

切島君の声が聞こえたことで咄嗟にその手を引っ込めていた。
それは他校の訪れを知らせるもので、あのままぼんやりしてたらどうなっていたかを考え、逆上せそうになる顔を小さく隠した。


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