第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
一次試験終わりを告げた時はまるで別人のように高らかだった声はすっかり元のやる気のない声となってのアナウンスが流れた。
《えー100人の皆さん、これご覧下さい》
その声が示した真っ暗になっていたスクリーンに映し出されたのは試験中と同じ会場の全貌。
「フィールドだ」
「なんだろうね」
次にくるであろう指示をスクリーンに目をやりつつ待っていると、いきなり大きな爆音と共に会場の施設が次々に爆破されていきあっという間にそこは被災地といっても過言ではない状態へと様変わりしてしまった。
控え室内の全員が「ーー何故!!」と驚きに包まれる中、状況説明をする事なく告げられたのは試験の内容だった。
《次の試験でラストになります!皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます》
「救助…!」
「「パイスライダー…?」」
同じ聞き間違いをしたのか、上鳴君と峰田君の声がハモった。
語感だけで似て非なる単語に、すかさず葉隠さんと八百万さんのフォローが入る。
「現場に居合わせた人のことだよ。授業でやったでしょ」
「一般市民を指す意味でも使われたりしますが…」
「因みに、パイスライダーじゃなくてバイスタンダーだよ?」
「お、おぅ。パイスタンダーな!」
「……うん」
同じことの繰り返しになりそうだと訂正するのを諦めて続くアナウンスに耳を傾けることにした。
《ここでは一般市民としてではなく、仮免許を取得した者として——…どれだれ適切な救助を行えるか試させて頂きます》
視線はスクリーンに向いたまま、爆煙が少しずつ晴れていく中で何かが動く気配に目を凝らすとそこにはーー…
「む…人がいる…」
「え…あァ!?」
「あァア!?老人に子ども!?」
「危ねえ、何やってんだ!?」
どう見ても一般人にしか見えない人達が会場内の至る所に姿を現したのだ。
《彼らはあらゆる訓練において今、引っ張りダコの要救助者のプロ!!》
「要救助者のプロ!?」
《「HELP・US・COMPANY」略して「HUC」の皆さんです》
「色んなお仕事があるんだな…!」
「ヒーロー人気のこの現代に側した仕事だ」
そんなプロがいたのかと救助演習も授業とはまるで違う、そんな予感を何処かで感じていた。
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