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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第11章 原作編《仮免試験》


紫沫SIDE


「っゃ、しょぅ…と、くん…」
「少しなら我慢できるんだろ」

それは沁みる痛みに対してだと分かっている筈なのに、揚げ足をとる物言いに反論しようにも。
一度離れた唇が既に紅く咲いた花弁に再び寄せられては、更に色濃く喰らいつくような感覚がして。
それだけに留まってはくれず。
傷口の側をなぞっていた指先は皮膚の裂け目に這い寄って、鋭敏な刺激を誘発させている。
そのどちらも間違いなく痛覚を伴っているというのに。
快感に悶えるかの如く小刻みに揺れる身体に、これは勘違いだと言い聞かせても。
喉奥では甘さを含んだ音が生まれて、漏らすまいと堪える程に吐息が上がるのを止めることままならなくなって。
返す言葉を見つけられず、虚ろに霞む瞳には切り傷よりも深く刻まれた緋い痕が映った。

「紫沫の身体に残る痕は俺のシルシだけにしてくれ」

懇願にも似た言葉とは裏腹にその声音は静かでありながら勝手は許さないという含みを持ち合わせていると、こちらを見上げる優しくも熱を秘めている強い眼差しから感じて。
一時足りとも瞳を逸らせなくなり、金縛りにあったみたいに身動きが取れなくなっては、差し伸ばされた手が後頭部へ回る。
掴まれて、引かれて。
導かれた先で重なる唇の心地良さに酔いしれるほか術はなかった。

「ーー…これで終わりだ」
「…ありがとう」

気付けば手当ては全て済んでいて、コスチュームを着てくるよう促される。
着終えた頃に平静を取り戻しては、試験中にあるまじき行為に少なからず後ろめたさを抱きながらも、焦凍君と共に控え室に戻った。
椅子に腰を下ろしつつ若干人が増えた様に思って、席を外していた間に通過者が出たのではと。
1-Aの皆のことが気掛かりに変わり、辺りを見渡してみるけど見知らぬ人達ばかりで雄英生は2人だけのようだ。

《現在70名。後30名で終わりですよ》

そこへ残りの枠を知らせるアナウンスが流れた。

「クラスの奴ら来ねぇ…やっぱ"個性"知られてんのは厳しいか」
「うん…でも、体育祭の時のままじゃないから。訓練して新しい技だってあるし、きっと大丈夫。だよね?」
「そうだな。まだ枠は残ってる。ここから…」

と、途中で止めた言葉に焦凍君の目線に合わせて前を向くと。
見慣れたコスチュームの4人がこちらに歩いてくる姿を捉えていた。


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